日本経団連タイムス No.2903 (2008年4月24日)

「中小企業の課題」で講演聴く

−中小企業委員会で清成・法政大学名誉教授から


日本経団連は15日、東京・大手町の経団連会館で中小企業委員会(指田禎一委員長)を開催し、法政大学名誉教授・学事顧問の清成忠男氏から「中小企業の課題」をテーマに講演を聴取した。概要は次のとおり。

1.中小企業観について

これまで中小企業は、一つの固定的階層としてとらえられ、「経済的弱者である」「製造業かつ下請け企業である」などといった固定観念を持たれがちであった。しかし、グローバル化、サービス経済化の進展等により中小企業をめぐる環境が変化している今日では、それぞれの企業において持続性や業態等にさまざまなバラツキが出てきているため、中小企業を一つの固定的な階層としてとらえることは不可能になっている。そのため、これまで抱いていた中小企業観を再検討する必要があることを指摘した。

2.中小企業の特徴について

このような中小企業観の変化を踏まえた上で、中小企業の特徴として次の4点を挙げた。

  1. (1)経営動機が多様であり、利潤追求・拡大指向型の企業もあれば、自営・生業型の企業もある
  2. (2)経営能力にバラツキがあるため、経営資源の高度化等の変化についていける企業とついていけない企業がある
  3. (3)個々の企業がある一つの分野に専門特化し、ネットワーキングを使い、他企業と連携して事業を展開する
  4. (4)財務上、法人と経営者の区分があいまいであるため、法人の財務諸表のみでは経営分析ができない

3.地域再生と中小企業

現在、経済活動の中心が首都圏・中京圏に集中しているため、その他地域との格差が拡大している。このような地域では既に少子・高齢化による人口減少社会を先取りしており、人口減による税収減、高齢化による支出増により地方税を上げざるを得ない状況である。このような中、たとえ地域内で産業を興したとしても、税負担の増加によって住民の可処分所得が減少しているため、消費が増えない。そこで、いかにして地域外の市場を開拓していくかということが重要になり、そのためには中小企業が担い手となって、新産業を創出し、地域を再生させていく必要があることを指摘した。

4.中小企業の課題と政策

以上の点を踏まえた上で、中小企業の今後の課題について次の三つを挙げた。

  1. (1)アイデアをみつけ、ビジネスモデルを構築していけるよう、市場探査力を向上させること
  2. (2)経営者の経営力を高め、生産性を向上させること
  3. (3)前記(1)(2)の課題を克服した上で、人材形成を行うこと

一方、中小企業政策は、1999年の中小企業基本法の改正により、それまでの政策から大転換された。今後は、規制緩和により新規参入を促進していくことと、企業家能力の育成に向け、ビジネススクールの質的向上を図っていくことが必要であると指摘した。

【労政第一本部企画担当】
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