日本経団連タイムス No.2904 (2008年5月15日)

ICTと環境問題に関するセミナーを世界情報基盤委員会(GIIC)と共催

−地球温暖化対策におけるICTの役割で意見交換


日本経団連は4月24日、東京・大手町の経団連会館で、「持続可能な社会環境の実現に向けてICTが持つ可能性」をテーマとするセミナーを、民間主導による情報社会の発展をめざす非政府系国際組織である世界情報基盤委員会(GIIC)と共同で開催し、150名余りが参加した。

地球温暖化を原因とする異常気象や災害の深刻化を背景に、今年開催される主要8カ国首脳会議で環境問題が主要テーマとなるなど、地球環境問題への関心が高まりつつある中、ICTによる環境問題の課題解決に向けた新しい取り組みを中心に、パネルディスカッション等を通じて参加者が認識を共有した。

冒頭の開会のあいさつでは、主催者代表として日本経団連の古川一夫副会長が、「現行の省エネルギーや二酸化炭素削減の取り組みを途上国にも広げるとともに、ICTを活用した新しい対策を講じるために叡智を結集させなければならない」と強調した。

基調講演では、元環境大臣、元外務大臣の川口順子参議院議員が、日本は国際社会におけるプレゼンスを維持するためにも、二酸化炭素削減目標をなんとしても達成しなければならないとの認識を示した上で、「世界を低炭素でより良い場所にするために、画期的なイノベーションのブレークスルーを期待する」とICTへの期待を述べた。続いて、インターネットのIPアドレスやドメイン名等の管理・運営を担う民間非営利法人であるICANNの議長兼CEOのポール・トゥーミー氏が、「ユビキタス社会の実現は経済活動の効率化・コスト削減に資するものだが、そのためにはICTを活用したインフラの強化が不可欠である」と述べた。

後半のパネルディスカッションでは、加藤幹之日本経団連情報通信委員会国際問題部会長がモデレーターを務め、GIICの主要メンバーが持続可能な社会環境の実現にICTがどのように貢献できるかを議論した。その中で、ブリティッシュテレコムグループのマット・ブロスCTO(最高技術責任者)は、自社における二酸化炭素排出量を10年間で60%削減した事例を紹介した上で、「CSRと持続可能性の向上を図ることは、ビジネスの成功に適う」と力説した。

また、テレコムマレーシアのラジ・マンゾール会長は、「テレワーキングの推進や代替エネルギーの活用において企業が負うべき責任は重い」との認識を示した。アクセンチュアのドナルド・リパートCTOは、ICTの利活用による二酸化炭素削減の取り組みを「シリコンとカーボンの戦い」と表現し、取り組みを推進する上での社会インフラとしてのインターネットの重要性を改めて強調した。また、日立製作所の山口光雄執行役常務は、自社における省エネルギーや二酸化炭素排出削減の取り組みを紹介し、「ICTの貢献が社会的に評価されるには、貢献度を可視化・定量化する必要がある」と訴えた。

最後に、秋草直之GIIC世界議長から閉会のあいさつがあり、今後さらなる二酸化炭素削減を図るためには、イノベーティブな取り組みと、産業や国をまたいで二酸化炭素削減効果を測る共通のモノサシが必要であると述べ、セミナーを締めくくった。

【産業第二本部情報通信担当】
Copyright © Nippon Keidanren