日本経団連タイムス No.2904 (2008年5月15日)

ヤンシャ・スロベニア首相と昼食懇談会

−日・スロベニア経済関係発展の潜在性などを聴く


日本経団連は4月22日、東京・大手町の経団連会館で、ヤネス・ヤンシャ・スロベニア共和国首相との昼食懇談会を開催し、スロベニア側からヤンシャ首相のほかアンドレイ・ヴィズャク経済大臣らが、日本経団連からは本田敬吉OECD諮問委員長らが出席した。ヤンシャ首相のあいさつ要旨は次のとおり。

■ 順調に進展するビジネス環境整備

スロベニアは2004年にEU加盟、07年11月にユーロ導入、07年末にシェンゲン領域への加入を果たし、現在、OECDへの加盟交渉を進めている。加盟が実現すれば、国内の法制度をはじめとする経済交流の基盤の整備が一層促進されるだろう。また、国内の治安も安定しており、非常に良好なビジネス環境を提供できる。

独立後のスロベニアは、非常に速い経済発展を遂げている。昨年は、独立以来最も高い6%の経済成長率を記録し、失業率は5%を下回った。輸出がGDPの70%超を占めるが、そのうちの20%は自動車関連が占めている。GDP全体に占める輸出の割合が大きいスロベニアにとって、先進国との経済関係強化は不可欠である。

スラブ・ゲルマン・ロマンシュ・イタリアなど多様な文化の接点の中で活動するスロベニア企業は、文化に関するノウハウを豊富に蓄積している。特に、旧ユーゴスラビア連邦から独立を果たした他の共和国のみならず、ロシアとも良好な経済関係を築いており、スロベニア企業が合弁でロシア市場に参入するケースも多い。

■ 日・スロベニア経済関係発展の潜在性

スロベニアでは、日本に対する関心が高く、現在、リュブリャナ大学には、日本研究を行う学生が150人も在籍している。スロベニアは独立以来、日本と大変良好な関係を築いているが、近年は両国間の経済関係においても緊密化が進み、大変喜ばしい。今後も両国間の経済交流を一層強化していきたい。

現在、日・スロベニアの貿易高は、両国の経済交流の潜在性をはるかに下回る水準にとどまっている。特に、自動車関連分野には日本企業の存在感をより大きく向上させる余地が十分に残されている。スロベニアの部品メーカーは既にヨーロッパの一流自動車メーカーに部品を供給しており、ヨーロッパ各地で活動する日本の自動車メーカーとの協力が可能である。

また、サービス部門における日本とのビジネス拡大の可能性も大きく、注目に値する。ヨーロッパ各地へのアクセスの利便性や流通基地となり得る港に恵まれている等、地理的な好条件を活かすことにより、流通分野を通じて、日本からの直接投資の拡大を大きく後押しできるだろう。

さらに、保養・スポーツ・自然を軸とした観光分野の発展の潜在性も大きい。日本からの観光客もここ数年来急増している。観光産業の発展により、投資先としての魅力も一層増すのではないか。ホテルやレクリエーション施設など、保養地開発におけるビジネスの可能性にも期待できる。

そのほかにも、スロベニアは環境問題に関連する産業への投資にも強い関心を寄せており、日本の環境保全技術をヨーロッパに導入する際の拠点になれる。現在、既存の発電所の改修以外に、新規の発電所建設も計画されている。既に、スロベニア国内では日本企業と大規模な共同事業の実績もあるが、今後予定されている原子力発電所の増設は大規模投資の絶好の機会である。さらに、インフラ整備の一環として、鉄道の近代化も図っており、高水準の鉄道技術を持つ日本との協力に大いに期待している。

スロベニアは現在、日本との間で、租税条約の締結に向けた交渉ならびに科学技術協力協定の内容改定交渉を進めている。

【国際第一本部欧州・ロシア担当】
Copyright © Nippon Keidanren