日本経団連タイムス No.2904 (2008年5月15日)

マンデルソン欧州委員との懇談会開催

−貿易投資委員会・ヨーロッパ地域委員会委員と意見を交換


EC(欧州委員会)通商担当であるピーター・マンデルソン委員が4月21日、東京・大手町の日本経団連を訪れ、貿易投資委員会(佐々木幹夫委員長、秋草直之共同委員長)およびヨーロッパ地域委員会(米倉弘昌委員長、佐々木元共同委員長)の主要委員と懇談した。

■ マンデルソン欧州委員説明

まず、マンデルソン欧州委員は、グローバル競争が激化する中、日本とEUは、新興国の台頭、高齢化の進行や経済の減速、構造改革の必要性など共通の課題を有することを指摘した上で、次のように述べた。

◇ WTOドーハ・ラウンドの推進

日EUは、ラウンドの年内妥結に向けた作業が喫緊の課題であるとの認識を共有するとともに、交渉上の立場も類似している。また、世界経済の不透明感が増加している今こそ、ラウンドの成功が世界経済への信任を回復させ、保護主義への対抗が可能となるとの見方でも一致している。

先の数週間で、特に農業分野において、日EUともに評価できる進展があったので、今後は鉱工業品およびサービス交渉において進捗が必要である。台頭する新興市場国が競争力に見合った貢献を行わないままラウンドが決着することのないよう、EUと日本はワンボイスで主張していかなければならない。

◇ 対日投資の拡大

日本は、輸出・対外投資を活発に行い、優れたサプライチェーンの構築を実現しており、グローバル化のパイオニアである。この点を高く評価している。他方、自国の市場、特に対日直接投資の開放については消極的である。しかし、今後も競争力を維持するには、これまで成功したビジネスモデルを改革しなければならない。外資の導入により、技術革新を促進することが不可欠であり、日EUが協力し改善していくことが重要である。

例えば、政府の規制の重さ、手続きの遅さは日本企業にとっても問題であり、また特に外資にとって、日本政府の規制や運用の透明性と予見可能性の欠如が大きな課題である。日本政府は、対日直接投資増加を実現する手段を明確化するとともに、排他的な印象を与えないよう、対外的にわかりやすい説明が必要である。

欧州にとって日本は、高付加価値分野のイノベーションを可能とする生産拠点として極めて重要な市場であり、金融センターとしての潜在力も高い。投資の開放により、こうした魅力を維持してほしい。

■ 日EU経済連携の推進のあり方

その後行われた懇談では、日本経団連側から、日EUは自由・民主主義・市場経済といった共通の価値観を有しており、日EUの関係をより緊密な関係へと進めるべき段階にあることを指摘し、日EU経済連携協定(EPA)に関する産官学の共同研究の開始を要請した。

これに対し、マンデルソン欧州委員から、そのような提案にはオープンマインドであり、双方の産業界が今後まとめる予定の報告書に期待するとの発言があった。他方で、交渉は双方に痛みを伴い時間を必要とするものであり、その他の有益な取り組みがおろそかになる可能性もあるとの見方を示した上で、日本側の関心は欧州の関税削減・撤廃にある一方、欧州側は日本の貿易・投資における非関税障壁に関心を有しており、このように双方の関心に隔たりがある現状においては、何が実現可能かを双方が十分議論する必要があると述べた。

日本経団連側はさらに、日本政府も日本経団連も対日投資を歓迎していることを強調した上で、日本市場においてはより長期的な投資が成功する傾向がある点などを説明した。

【国際第一本部貿易・投資担当、欧州・ロシア担当】
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