日本経団連タイムス No.2906 (2008年5月29日)

報告書「仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度の構築・運用に向けて」を公表

−今後の賃金の方向性提示/賃金制度設計の考え方示す


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は20日、「仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度の構築・運用に向けて」と題する報告書を取りまとめ、公表した。
同報告書は、2007年5月に発表した提言「今後の賃金制度における基本的な考え方−従業員のモチベーションを高める賃金制度の構築に向けて」の内容を深掘りし、年齢や勤続年数に偏重した年功型賃金から、仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度への移行にあたり、参考となる賃金制度設計の考え方を示したものとなっている。同報告書の概要は次のとおり。

<第1章>賃金を取り巻く環境の変化と課題

重視すべき賃金決定要素が、年齢・勤続年数から、「仕事」そのものを中心に労働市場における需給関係、企業の支払能力、人材の確保と定着、従業員のモチベーションの維持・向上へとシフトしている。

「企業戦略」や「公正性」をめぐる環境変化に伴い、賃金制度にはさまざまな課題があるが、中でも、激化する競争環境下で雇用の維持・創出を図るためには、企業の支払能力に基づく賃金決定が重要である。

<第2章>今後の賃金の方向性

今後の賃金制度は仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度とすることが望ましく、そのためには、仕事・役割・貢献度と処遇の相関を強めることが必要である。そうすることで、個人の成長と企業の成長を同時にもたらす効果が期待される。なお、仕事・役割・貢献度を基軸とした代表的な賃金項目として、職務給、役割給、発揮された能力による職能給、貢献給(業績給・成果給)などがある。

<第3章>賃金制度設計上の留意点

賃金制度を設計するにあたり、企業戦略との整合性を図る視点から、シンプルでわかりやすい制度とすること、人材育成と中長期的なモチベーション維持に資する賃金制度とすることが重要である。また、公正性の視点から、公正なチャレンジ機会の確保・充実を図るために、仕事、役割、発揮能力などの基準の明確化が重要である。

具体的な賃金体系については、企業によって業態や仕事特性が異なることから、全従業員に同一の賃金項目を適用する「単一型体系」、あるいは、定型的な職務に就く層と、非定型的な職務に就く層で適用する賃金項目を変える「複線型体系」などさまざまな工夫が考えられる。

また、制度を導入することのみを目的とするのではなく、制度趣旨どおりに運用することも重要である。

さらに、賃金水準については、労働生産人口の減少に伴い、需給関係を重視する必要があるほか、各社の生産性の違いを前提に、各社が主体的に賃金決定するべきである。

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日本経団連は、各企業が、仕事・役割・貢献度を基軸とした賃金制度の構築に向け取り組む際の参考となるよう、同報告書を冊子として刊行し、会員企業をはじめ広く周知していく。
冊子の購入についてのお問い合わせは、日本経団連事業サービス(電話03‐5204‐1922)まで。

【労政第一本部労政担当】
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