日本経団連タイムス No.2910 (2008年6月26日)

アル・アーニー・イラク大統領府長官が来訪

−復興へ日本の支援に期待感示す


日本経団連の渡文明副会長・中東・北アフリカ地域委員長は10日、東京・大手町の経団連会館でイラク共和国のナシール・アル・アーニー大統領府長官の表敬訪問を受けた。アル・アーニー長官の発言要旨は次のとおり。

今回、初めての日本訪問で、メーカーの工場などを見学し、高品質の日本製品を産み出すために従業員が心を込めて働いている姿を見ることができた。わが国の国民の間では、優れた品質を持つ日本製品に対する信頼度が極めて高い。

また、訪問した広島大学では「戦災後の国家の再建」というテーマで、日本がどのような形で敗戦を迎え、戦後どのように復興を果たしてきたか、その際どのような政策が取られたかについて意見交換した。われわれは、戦後の日本がすばらしい国づくりに成功したノウハウを、戦争で疲弊したイラクの再建のために活用したい。奇跡の戦後復興を果たした日本を、イラク再建の手本としたい。

今後イラクの復興に向け舵取りしていくにあたり、今回の戦争による爆撃や攻撃で破壊されたインフラを復旧するために日本からさまざまな支援や協力を得られれば幸いである。1980年代のイラン・イラク戦争の後、破壊された橋梁や政府施設、通信設備や病院などのインフラの復旧に、日本企業は大きな役割を果たした。今は、当時の何倍もの役割が日本企業に期待されている。われわれは今後イラクの再建を進める上で、技術支援、政府のスタッフや民間部門を対象とする人材研修など、さまざまな分野で日本政府や日本企業の支援を必要としている。今回、日本政府から国際協力銀行を通じて円借款が提供されることとなり、大変心強く思う。

治安は、政府が力を入れて取り組んでおり、良い方向に向かっている。100%の治安が確保されているとはいえないが、競争相手の少ない今、多少危険があってもリスクを取ってイラクに投資をすれば、見返りは大きいと思う。日本企業にも他国の企業に後れを取ることなくイラクに進出してほしい。

08年2月7日にタラバーニ大統領が15項目の声明を発表した。最も重要な点は、「武器は国家にのみ帰属し、民兵組織や政治勢力が許可なく所有してはならない」ということだ。武器の使用と権力を国家に帰属させる政策であり、高い評価を受けている。また、すべての政党や政治結社は次回の選挙を武力なしで進めることで合意している。今後、治安は悪化することはなく、改善する一方だろう。

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アル・アーニー長官の発言を受けて渡副会長・委員長は、長官の日本に対する期待に率直に謝意を表明するとともに、今までイラクの人々と日本人とは精神面で共通点があると親近感を持っていたが、長官の話から両国に敗戦という共通の経験があることを改めて認識した、と発言した。また、日本とイラクの両政府が7月にヨルダンのアンマンで開催する「日本イラク経済フォーラム」に触れ、このフォーラムが、イラク投資を検討する上での参考になればとの期待を述べた。最後に、多くの企業がイラクにさらなる関心を持つよう最大限の努力をしたいと締めくくった。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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