日本経団連タイムス No.2913 (2008年7月17日)

08年度事業計画などを審議

−「宇宙外交」テーマに講演聴取/宇宙開発利用推進委員会総会


日本経団連は8日、東京・大手町の経団連会館で、宇宙開発利用推進委員会(谷口一郎委員長)の2008年度総会を開催した。同総会では07年度の事業報告と収支決算、08年度の事業計画と収支予算、役員の一部改選、および規約の一部変更について審議した。また、河井克行法務副大臣・衆議院議員から講演を聴いた。

07年度の事業報告については、提言「宇宙新時代の幕開けと宇宙産業の国際競争力強化を目指して」の取りまとめ、宇宙基本法成立に向けた与野党への働きかけ、07年度予算編成に関する関係方面への働きかけ、政府の宇宙開発委員会計画部会における谷口委員長の意見表明、会報「宇宙」第56号「各国の宇宙戦略」の出版等が報告された。

外交・国際協力など3項目推進

続いて、08年度事業計画について説明があった。宇宙関連予算が低迷し、宇宙産業にとって厳しい状況が続く中、「地理空間情報活用推進基本法」に基づく「地理空間情報活用推進基本計画」が4月に決定し、5月には念願の「宇宙基本法」が成立するなど、わが国の宇宙開発利用に関して明るい兆しが見え始めている。そのような状況を踏まえ、宇宙開発利用推進委員会は今年度、(1)宇宙の産業化促進のための環境整備(2)外交・国際協力(3)広報・調査――の3つを推進することとしている。

具体的には、(1)宇宙基本法成立後の宇宙開発利用推進に向けた提言の取りまとめ(2)来年度予算編成に際しての関係者への働きかけ(3)準天頂衛星システム推進に向けた関係者の連携強化・普及啓発(4)わが国の宇宙技術を活用した諸外国との協力強化へ向けた関係機関との協議(5)会報「宇宙」の出版――等を実施する。

役員の一部改選については、常任委員が1名交代、監事が1名退任した。
また、規約を変更し、事業計画と収支決算を審議事項から総会への報告事項とした。

議件審議終了後には、河井議員から「宇宙外交」をテーマに講演を聴いた。河井議員はまず、日本にとって最も重要な政策分野は外交であり、宇宙こそが外交の舞台になると述べた。その上で、外交と安全保障は表裏一体であり、両者を一体的に進めるとともに、地球温暖化や自然災害対策等の新しい安全保障のための宇宙利用が必要と主張した。他方、抑止力とソフトパワー向上のため、科学技術に関しても日本はアジアの中で別格という評価を築くべきであり、不退転の決意で有人宇宙飛行計画の検討を始める必要があるとの論を展開した。最後に、国益に沿った新しい宇宙秩序構築の重要性を訴え、(1)外交(2)安全保障(3)産業の振興発展(4)国民への夢と刺激(5)人類の進化――の5つの理念を盛り込んだ宇宙基本計画を策定すべきと締めくくった。

質疑応答で河井議員は、独自技術育成と国際協力の関係について問われたのに対し、どこにどれだけの資源を割くかに関する国内の議論が必要と述べた。また、衛星によって収集した情報の活用に関しては、スーパーコンピュータを用いて特定地域の将来環境を予測し、外交に役立てることが重要と回答した。

【産業第二本部宇宙担当】
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