日本経団連タイムス No.2913 (2008年7月17日)

「外国人材の定住化と社会統合のあり方」で明治大学国際日本学部・山脇教授から聴く

−外国人政策など/経済政策委員会企画部会


日本経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)は3日、人口減少下における経済社会のあり方について、マクロ経済の観点から検討を進めるにあたり、山脇啓造・明治大学国際日本学部教授から、「外国人材の定住化と社会統合のあり方」について説明を聴いた。

山脇教授はまず、在日外国人の推移について、「外国人登録者数は、2007年末において、3つの逆転がみられた。すなわち、(1)国籍別にみると、これまで一貫して最大の構成比を占めていた韓国・朝鮮を、中国が上回った(2)在留資格別にみると、旧植民地出身者とその子孫からなる特別永住者を、90年代以降急速に増加したいわゆるニューカマーからなる一般永住者が上回った(3)都道府県別にみると、これまで東京都に次いで外国人登録者数の多かった大阪府を、ブラジル人が日本一多い愛知県が上回った」「これらは、統計上、在日外国人の中心が特別永住者からニューカマーに移ったことを反映している」と説明した。

また、外国人政策は、「出入国政策と社会統合政策に分けて考える必要があるが、後者は、70年代以降、在日コリアンの多い自治体において、そして90年代以降、ニューカマーが増加した自治体において、国に先行して積極的な取り組みが行われてきた」「01年には、外国人住民の多い浜松市など13市町により『外国人集住都市会議』が発足し、多文化共生社会の推進に向けた提言を国に対して出してきた。この提言等を受け、総務省は『多文化共生推進プログラム(06年3月)』を策定した。これは、これまで各自治体で行われてきた社会統合政策を体系化した点、また、従来からの労働者政策や治安対策といった観点に加え、生活者としての外国人という観点を打ち出した点に意義がある」と説明した。

最後に、今後の課題として、多文化共生社会の形成に向けた基本法の制定や、内閣府多文化共生局の設置、外国人に対する日本語教育・学校教育の整備、定住化に向けた法的地位の安定化等の必要性を指摘した。

なお、経済政策委員会では、8月1日に「欧州各国における移民政策の状況」について説明を聴取した後、9月の上旬、下旬の2回にわたって提言骨子案の審議を行い、10月を目途に提言を取りまとめる予定である。

【経済第一本部経済政策担当】
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