日本経団連タイムス No.2913 (2008年7月17日)

WBCSDタスクフォース開催

−ポスト京都議定書の国際枠組み交渉への取り組みなど説明聴く


日本経団連は11日、東京・大手町の経団連会館でWBCSDタスクフォース(立花慶治座長)を開催し、WBCSDの佐々木緑気候変動担当マネージャーから、ポスト京都議定書の国際枠組みに関する交渉に対する認識ならびに取り組みについて説明を聴いた。2009年12月のCOP15での採択に向け、ポスト京都議定書をめぐる議論が本格化する中、日本経団連としてもWBCSDとの連携を強化していく考えである。佐々木マネージャーの説明概要は、次のとおり。

■ ポスト京都議定書の国際枠組みに関する交渉

ポスト京都議定書の国際枠組みに関する国連交渉は開始されたばかりであり、あまり大きな進捗は見られない。他方で、エネルギー価格の高騰、需給の逼迫は、温暖化対策と表裏一体である、エネルギー効率の向上やイノベーションへのインセンティブとなっているのも事実である。

今後、09年12月のCOP15に向け交渉が進められることになるが、ホスト国のデンマークは成果を上げるべく、積極的に準備を進めている。COP15が重要な会合となることは疑いの余地がないが、ポスト京都議定書の枠組みを採択する場というよりは、より本格的な交渉の始まりの場となる可能性もある。米国の新政権が来年1月に発足し、体制が機能し始めるのが9月ごろであることにかんがみれば、COP15ですべてを決めることは難しいかもしれない。

長期目標については、「2050年に温室効果ガスの排出量を世界全体で半減する」という暗黙のコンセンサスができつつあり、洞爺湖サミットにおいても国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の全加盟国で共有することが提案された。他方、中期目標については「バリ・アクションプラン」において先進国と途上国との間の「差異ある責任」が明記されたものの、総量目標を掲げるのか、エネルギー効率ベースの目標とするのかといった点も含め、具体的なことは今後の交渉を通じて決まる。

いずれにせよ、ポスト京都議定書では、より厳しい目標、各国の温暖化対策へのより強いコミットメント、より多様なメカニズムが見込まれており、各国の民間セクターに多大な影響を与えることは必至である。また、地球規模でのガバナンスが今まで以上に問われることになる。

■ WBCSDの取り組み

こうした認識の下、WBCSDとしても、ポスト京都議定書に向け、取り組みを強化していく。具体的には、(1)各国政府に対し、温暖化対策における民間セクターの役割を周知する(2)ポスト京都議定書の国際枠組みの条文に盛り込むべき事項について、交渉担当者に対して、具体的なインプットを行う(3)各国の政府関係者との対話を推進する(4)国際商業会議所(ICC)、世界経済フォーラム(WEF)のほか日本経団連等、世界の民間団体と連携して交渉に対するインプットを行う。

そのために、WBCSDでは政策提言を取りまとめるセクション、交渉に直接産業界の意見を反映するセクション、国際会議の場でのイベント等を企画するセクションを結成して対応することとなった。

特に、(1)技術開発(2)技術協力(3)炭素市場(4)セクトラル・アプローチ(5)エネルギー効率(6)適応(7)土地利用(8)消費者行動――について産業界の意見を取りまとめ、UNFCCCにおけるポスト京都議定書の議論に反映していきたいと考えている。

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WBCSD( World Business Council for Sustainable Development / www.wbcsd.org )=「環境と持続可能な発展」に向け産業界におけるリーダーシップを果たすことを目的に1995年に設立(本部=ジュネーブ)。現在、「エネルギーと気候変動」について、電力、セメント中心に、セクター別のエネルギー効率基準等に関する議論が進捗している。
日本経団連は2003年1月よりリージョナル・パートナー。

【産業第三本部環境担当】
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