日本経団連タイムス No.2919 (2008年9月4日)

政治・経済情勢など、外務省・佐藤中南米局長から聴く

−日本コロンビア経済委員会総会


日本経団連の日本コロンビア経済委員会(小島順彦委員長)は8月7日、東京・大手町の経団連会館で2008年度総会を開催、外務省の佐藤悟中南米局長からコロンビアの政治・経済情勢、日本コロンビア関係について説明を聴いた。概要は次のとおり。

日本政府の対中南米政策

資源、エネルギー、食料などの需給逼迫を受けて、中南米が注目を集めている。GDPでみると、ASEAN10カ国の合計1兆ドル強に対して、中南米は合計3兆ドル弱と約3倍の規模であり、大きなポテンシャルを有している。経済関係の強化を図るべく、政府としても産業界の活動を支援していきたい。中南米では当該国政府の方針がビジネスに影響し、特に大型プロジェクトほど影響を受けやすいため、政府間の交渉が必要な場面も出てくるだろう。こうした観点から、経済産業省とも連携して、政府全体として産業界を支援していきたい。

コロンビアの政治・経済情勢

ウリベ大統領が02年に就任し、06年に再選された。大統領の最大の課題は、治安の改善、反政府組織対策である。ウリベ政権は、過去の政権の失敗と反省を踏まえ、「圧力と対話」という方針の下、特に圧力に力点を置きながら反政府組織と対峙し、大きな成果を上げた。その結果、86%と圧倒的な支持率を誇っている。

コロンビアには3つの反政府勢力が存在する。最大の組織はFARC(コロンビア革命軍)で、一時は3万人まで勢力を拡大させたが、ウリベ政権の掃討作戦が奏功し、現在1万人以下に減少し、組織自体もほぼ壊滅状態にある。誘拐などを中心に活動するFLN(国民解放軍)という左翼系ゲリラグループも、次第に勢力が弱まっている。また、左翼ゲリラに対抗するための自衛組織であるパラミリタリーは、5年前の政府との和平合意で解体された。その結果、殺人、誘拐、テロは急激に減少し、治安回復の著しい成果が上げられている。日本政府のコロンビアの安全情報は、07年4月時点で首都ボゴタを含めほとんどを「渡航の延期をおすすめします」「渡航の是非を検討してください」などの高い危険度の扱いとしていたが、現在は主要都市について「十分注意してください」の水準へと緩和した。渡航延期や渡航の是非検討の地域も縮小している。

ウリベ政権の外交、経済政策

外交面では米国と協力してテロとの戦いや麻薬対策を展開している。なお、コロンビア国軍が国境を越えてFARC掃討作戦を行ったことから、エクアドルやベネズエラとの関係が緊張した。現在、ベネズエラとは関係を修復したがエクアドルとは外交関係が断絶している。

また、ウリベ政権はアジアとの経済関係強化を望んでおり、APEC(アジア太平洋経済協力)への早期加盟を強く希望している。

経済面では石炭、石油、エメラルド等の豊富な天然資源を有し、人口も4600万人と中南米で第3位の規模である。ウリベ大統領は経済活性化の最も重要な柱として外国直接投資の誘致に力を入れており、外国との経済連携協定(EPA)締結を推進している。また、EUや域内各国との連携協定を積極的に進めた結果、02―06年の平均で約4.5%、07年は7.5%の成長を達成した。

日本との関係

今年は日本・コロンビア通商航海条約締結100周年であり、この機会に両国のさまざまな分野で関係強化のための行事が行われている。5月にはボゴタで記念式典が開催され、安倍晋三前総理夫妻、中川昭一日コロンビア友好議連会長など多くの関係者が出席した。

日本政府は、反政府組織との戦いの過程で発生した国内避難民対策や地雷除去のために種々の支援を行っている。特に教育が重要との認識から、小規模無償援助を活用して100以上の児童図書館を建設した。同時に今年7月から24カ国で構成するコロンビア支援グループの議長国として、欧米諸国と連携して支援方法を検討している。

二国間の貿易額は16億ドルと、そのポテンシャルに比べ低い水準にとどまっている。また、日本からの直接投資は1.7億ドルとコロンビアに対する外国直接投資の0.42%にすぎない。より一層の貿易投資の拡大が期待される。

二国間関係強化の新たな展開を図るため、4月に日本コロンビア賢人会が発足した。その目的は、今後数十年を見据えた友好協力関係の基礎をつくるために産学官で意見を出し合い、さまざまな阻害要因を分析し、今後取り組むべき課題を明らかにすることである。1年以内に提言をまとめることが予定されている。第1回会合を4月に東京で開催し、第2回会合を10月6、7日にボゴタで開催する予定である。ここでは最終報告書に向けた検討を行うこととしている。同賢人会が今後の両国関係を大きく発展させる重要な提言を行うことを期待したい。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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