日本経団連タイムス No.2920 (2008年9月11日)

組織の業務効率化のためのSaaS活用状況等を聴く

−SaaSのメリット強調/電子行政推進部会


日本経団連の電子行政推進委員会電子行政推進部会(遠藤紘一部会長)は3日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、米国セールスフォース・ドットコムのジム・スティール・プレジデント兼チーフカスタマーオフィサーを招き、米国等における、組織の業務改善・効率化のためのSaaS(Software as a Service、ソフトウェアをインターネット経由で利用できるサービス)活用状況等について説明を聴いた。

セールスフォース・ドットコムは、1999年に米国で設立された企業であり、今日、ユーザーが必要とするソフトウェア機能をネットワーク経由で提供する事業の先駆者となっている。

まず、スティール氏は、SaaSが組織にもたらす革新について説明。従来、企業をはじめとするユーザーは、販売、コールセンター、財務・会計、人事等の業務に必要な機能をシステム構築したり、パッケージとして購入してきたため、企業はシステムの運用・管理まで行う必要があり、大きな負担となっていたと指摘した。

その上で「しかし、今日、SaaSによって、ユーザーはネットワークを通じて、必要なソフトウェア機能だけを必要なときに利用することができる。これにより、企業は従来のようなシステム導入や管理等の必要がなくなり、大幅に費用・時間を削減することが可能になった。また、システムやソフトウェアの更新にかかる負担も軽減されることとなった」と語った。

このようにスティール氏は、「SaaSは従来のソフトウェアよりも迅速、簡単、低コストで導入でき、企業はIT予算をIT環境の保守管理ではなく、競争力の強化に集中配分できる」と述べ、SaaSのメリットを強調した。

また、SaaSの利用状況については、既に日米欧の多数の民間企業で導入されていると述べた上で、日本における例として、民営化された日本郵政グループの郵便局が、業務の効率化やサービスレベル向上の観点からSaaSを導入し、顧客からの問い合わせ報告システム構築やコンプライアンス強化を図った事例を紹介した。

さらに、スティール氏は、米国では民間企業のみならず、連邦政府、官公庁、非営利組織等、2500以上の組織が、経済振興、農業、輸送・交通、保安、司法、医療、ケア・サービス、教育等の幅広い分野でSaaSを導入していると説明。例えばニュージャージー交通局は、SaaS活用により、問い合わせ対応の作業効率を100%向上させたと述べた。

続く意見交換では、「電子行政を推進するためには、どのような取り組みから開始するべきか」という質問が出された。これに対し、スティール氏は、「まず、着手しやすい課題から小規模な取り組みを進めることで成果を上げ、その後、徐々に取り組みを拡大することが重要である」と回答した。

また、懇談終了後、同部会の進め方について打ち合わせを行った。部会の下に設置されたワーキング・グループの取り組みについて、星野哲郎ワーキング・グループ座長から説明があり、法制度・体制、国民ID、電子行政サービスの3テーマに関する検討および海外調査ミッションの結果等を踏まえ、11月を目途に電子行政を推進するための法制度や体制のあり方について提言案を取りまとめることが確認された。

【産業第二本部情報通信担当】
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