日本経団連の起業創造委員会(高原慶一朗共同委員長・齋藤宏共同委員長)は9月16日、報告書「企業発ベンチャーの更なる創出に向けて」を発表した。
同委員会は、1994年5月に前身の新産業・新事業委員会として設置されて以来、次代のわが国経済・産業を担う新産業・新事業の創出や起業家の育成・支援策等の起業を促す各種の環境整備に取り組んできた。その一環として同委員会企画部会では、企業の有する技術・アイデア等の資源を活用した新会社・新事業の創設を「企業発ベンチャー」として改めてその推進を図るべく、各社の取組みの現状と課題について会員企業10社からヒアリングを実施した。これは起業を絶えず創出する気運の維持・向上を図るとともに、各社の具体的取組みにかかわる情報を会員間で共有することにより各々の取組みの高度化推進をねらいとするものである。同報告書は、その概要や前記ヒアリングへの参加企業を対象としたアンケート調査の結果を取りまとめたものである。
報告書の概要は次のとおり。
企業発ベンチャーおよび新規事業の創出に向けた各社の組織や制度には、新規事業の企画・開発・事業化を推進する組織、社員公募によるアイデア募集や社内ベンチャー制度、社外のベンチャー企業およびベンチャーキャピタルに投資するファンドなどがあるが、その機能や運用等は各社各様である。これは、内外環境の変化の中で各社が組織・制度を常に見直してきた結果であるが、各社が直面する課題は共通するものも少なくない。
公募制度については、年々その応募件数が低迷する傾向が見られる。その対策として、積極的なPR活動や講演会を実施することによって、起業マインドを組織に根付かせる取組みが展開されている。
社員の事業計画書策定のための基礎知識・スキル不足により、提案内容がアイデアレベルの域を出ていない場合がある。このため、社員に対する新規事業創出のための基礎的能力やスキル向上のための研修等が行われている。
本業と関連性がない分野や新しい技術が鍵となる分野における新規事業では、制度を運営する部門や経営幹部だけでは判断が難しい場合があり、内外の目利き力を活用している例が見られる。
事業化した案件を大きく成長させるため、親会社からの人材の派遣や販路拡大などの営業支援などさまざまな取組みがなされている。
これらの事例は今後、各社が企業発ベンチャーの取組みを充実・強化し、自らにとって最適の制度を構築していく上で、大いに参考になるものと思われる。ヒアリング後に実施したアンケート調査でも、今回のヒアリングが各社の取組みを把握する上で貴重な機会となったことから、今後とも各社の取組み事例の紹介や関係者の交流の場の設置を求める声が寄せられている。
起業創造委員会では、関係機関・団体等とも連携しながらこれらの意見・要望に応えつつ、企業発ベンチャーの更なる創出に向けた活動を進めていく予定である。