日本経団連タイムス No.2924 (2008年10月9日)

新型インフルエンザ対策に関する懇談会を開催

−新型インフルエンザワクチン接種の進め方などめぐり意見を交換


日本経団連の国民生活委員会(岡部正彦委員長)および同委員会企画部会(高尾剛正部会長)は2日、東京・大手町の経団連会館で新型インフルエンザ対策に関する懇談会を開催し、内閣官房副長官補室の伊藤義典参事官ほか関係省庁担当官から、新型インフルエンザ対策における基本方針(案)および新型インフルエンザワクチン接種の進め方(第1次案)について説明を聴くとともに意見交換を行った。

伊藤参事官からは、「新型インフルエンザ専門家会議で検討された新型インフルエンザ対策における基本方針(案)は、今後の新型インフルエンザ対策行動計画の柱となるものである。また、新型インフルエンザワクチン接種の進め方(第1次案)は政府としての第1次案との位置付けで、今後パブリックコメントなど国民の意見を踏まえて年度内に政府としての案をまとめていきたい」との説明があった。

続いて、厚生労働省からそれぞれの内容について説明が行われた。この中で、「新型インフルエンザ対策における基本方針(案)は、政府の新型インフルエンザ対策の基本的考え方を示したものであり、対策の主な目的として、(1)感染拡大を可能な限り抑制し、健康被害を最小限にとどめる(2)社会・経済を破綻に至らせない――ことの2点を掲げるとともに、WHO(世界保健機関)が宣言するフェーズを参考にしつつ、日本における対策を講じるのに適した段階として、新型インフルエンザが発生する前から国内でパンデミック(大流行)が起こり、小康状態に至るまでを5つの段階に分類して、それぞれの段階に応じた対策等を定めた」との説明があった。

次に、新型インフルエンザワクチン接種の進め方(第1次案)の説明では、職業別に5段階の優先順位を付けて接種する案を提示した。この中で、「ワクチン接種順位の考え方として、感染症指定医療機関や保健所、検疫官、停留施設、国際航空など発生時に即時に第一線で対応する業種・職種(カテゴリー1)、国民の生命・健康・安心・安全にかかわる対象として、(1)国や地方自治体の新型インフルエンザ担当者など対策遂行の意思決定にかかわる者(2)指定医療機関以外の医療従事者、介護、福祉従事者、医薬品・医療機器の製造販売業者など国民の生命・健康維持に必要な業種・職種(3)国会議員、地方議会議員、報道関係者、警察官、法曹関係者など国民の安全・安心にかかわる業種・職種(カテゴリー2)、運輸、通信、食品製造・販売、金融、情報システムなど国民の最低限の生活(ライフライン)の維持にかかわる業種・職種(カテゴリー3)に分類し、カテゴリー1から2、3の順に先行接種させる」「今年度、プレパンデミックワクチンの安全性・有効性についての臨床研究を実施し、その結果を踏まえ、順次接種対象者を拡大する」などの説明があった。

引き続き行われた意見交換では、参加者から、(1)社員だけにプレパンデミックワクチンを接種しても家族が倒れると社員は出社できないので、同居家族まで接種範囲に含めてほしい(2)カテゴリー3の事業者にも、新型インフルエンザの発生前に接種してほしい(3)第二段階の「国内発生早期」という言葉では、それ以前は国内にウィルスが全くいないかのような誤解を与えるのではないか(4)プレパンデミックワクチンの臨床研究は現段階でどのような状況にあるのか(5)カテゴリー3の中でもどの業務まで先行接種の対象になるかを明確にしてもらい、決定したらそれが国民的合意であることを広く周知させてほしい――などの質問・意見が出された。

これに対し、(1)まだ第1次案であり国民的議論を経た上で決定するものだが、カテゴリー1〜3で約1500万人程度になる見込みであり、同居家族も含めると5000万人超になってしまう。いずれにせよ、接種対象者の拡大は、プレパンデミックワクチンの有効性・安全性が確認されることが前提となる(2)有効性・安全性が確認できれば、どの程度の人数まで接種できるかを判断しつつ、接種のタイミングや段取りについて検討していくことになる(3)国内発症第1例目の前のアナウンスについてどのように報道することが適当か、関係方面とも協議を行っている(4)臨床研究は滞りなく進んでいる。また、パンデミックワクチンの早期製造体制の確立に向け、細胞培養法による製剤化技術開発を進めている(5)具体的にどの範囲が対象になるかはそれぞれの所管の省庁ごとに調査することを想定しており、具体的なスケジュールとしては今年度中に関係する事業者について定義の確認、概数の把握を行う予定である――などの回答があった。

【経済第三本部国民生活担当】
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