日本経団連タイムス No.2925 (2008年10月16日)

札幌で第56回北海道経済懇談会

−「北海道の活力を引き出し、逆境を飛躍の好機に変える」テーマに


日本経団連(御手洗冨士夫会長)、北海道経済連合会(道経連、近藤龍夫会長)は8日、札幌市内のホテルで「第56回北海道経済懇談会」を開催した。懇談会には、日本経団連側から御手洗会長、張富士夫副会長、前田晃伸副会長、大橋洋治副会長、池田弘一評議員会副議長、岡素之評議員会副議長が、道経連側は近藤会長はじめ会員約200名が参加、「北海道の活力を引き出し、逆境を飛躍の好機に変える」を基本テーマに意見を交換した。

開会あいさつした道経連の近藤会長は、北海道の経済情勢について、事実上景気後退局面に入った状況の中で、原油・原材料価格の高騰が企業経営を圧迫し、容易に価格に転嫁できない苦しい状況が続いていると指摘。その一方で、近年の外国人観光客の急増、道内31地域での産業クラスター研究会の活動、苫小牧・千歳における自動車関連部品産業の立地進展、IT産業の集積など、将来の北海道を創り出す新たな芽も出てきており、これらをどのようにして北海道経済の自立、活性化につなげていくかが課題であるとの考えを示した。

北海道知事の高橋はるみ氏は来賓あいさつの中で、北海道は食と観光の分野において世界に通用する北海道ブランドを創出することや、洞爺湖サミットを契機に、外国人観光客の誘致、海外への販路拡大、国際会議の誘致などに取り組んでいることを紹介した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は6日に「緊急アピール『補正予算の早期成立を望む』」を取りまとめたことに触れ、その中では、各国政府・金融当局が協調・連携し、金融システム不安を早期に沈静化するよう求めるとともに、中小企業の資金繰り対策や、個人・企業への減税など、緊急かつ思い切った景気対策を検討することを求めたと説明した。また麻生内閣に対しては、強い意思とリーダーシップをもって、一刻も早く日本経済の建て直しを図るよう強く要請していると述べ、道経連の会員企業に対し、こうした日本経団連の要望の実現に向けての理解と協力を呼びかけた。

■ 活動報告

第1部の活動報告では日本経団連側から、張副会長が平成21年度税制改正に関する提言、前田副会長が規制改革の推進に向けた取組み、池田評議員会副議長が道州制導入に向けた取組みについて、それぞれ報告。「税制改正に関する提言」では法人課税の見直しや、住宅取得促進税制の拡充、省エネ・環境関連税制の拡充、中低所得者層の子育て世帯への集中的な所得税減税などを求めたこと、「規制改革」の推進に関しては、このところ規制改革に強い逆風が吹いていることから、現在、年2回実施されている集中受付月間を年1回とし、所管官庁が時間をかけて真摯に規制改革に取り組むよう求めていること、「道州制導入」では、道州制のメリットを広く理解してもらい、導入に向けた気運を高めるために、各地域の経済連合会との共催で、シンポジウムを開催していることなどを報告した。

一方、道経連側からは、まず堰八義博副会長が「北海道経済の活性化に向けた取組み」を報告。北海道大学北キャンパスに研究開発施設を集積し、産学官連携による活動を推進していること、食や観光といった面で北海道ブランドの強化を図っていること、自動車関連産業など、ものづくり産業の集積を進めていることなどを紹介した。

次に、坂本眞一副会長が「高速交通体系の整備による地域づくり」について報告。北海道新幹線の新函館までの早期開業と札幌延伸への取組み、産業集積の形成や広域医療体制の確保、災害時の緊急輸送を実現するための高規格幹線道路の整備推進、新千歳空港の国際拠点空港化の促進――などの必要性について強調した。

続いて中井千尋副会長が「道州制をめざした地方分権の推進」に関し、道州制における国と地方の役割分担の明確化、財源の移譲、地域間の財源調整機能など、将来にわたる財源の確保、人材等の移行のシステム等の制度設計など、地域の実情を踏まえた慎重な議論としっかりしたロードマップが必要であると指摘。国の出先機関の見直しについては、将来の道州制の導入をしっかり見据え、地域の意見を取り入れながら議論が進められるべきであることを主張していきたいと述べた。

地方財源や環境問題など

■ 自由討議

第2部の自由討議では道経連側から、(1)地方の自主性を高めるためには、地方財源の充実を図ることが重要だが、法人二税(法人住民税、法人事業税)を中心とする現在の地方税は偏在性が高く見直しが必要である。地方交付税が大幅に削減され、本来地方交付税が有する財政力の格差を是正するという機能が減退している(山口博司副会長)(2)国内排出量取引制度については、公平な設定が難しい上に、排出権購入による短期的な目標の実現に力が注がれ、長期的視野に立った技術開発投資につながらないなどの問題があることや、環境エネルギー分野に新たな投機マネーの流入を招くおそれがあり、慎重かつ徹底的な議論が必要である。また、実質的な企業課税となる環境税には、コスト増大や雇用悪化につながることから反対する(藤原慶夫常任理事)(3)北海道は、積雪寒冷かつ広大過疎という地域特性から、暖房用の灯油代や自動車用のガソリン代などが家計に重くのしかかっている。農業者や漁業者のエネルギー節約努力に対する補助、運輸業界やマイカー利用者への対策として高速道路料金の引き下げなどが実施されることとなったが、引き続き効果ある追加対策に期待している(横山清副会長)(4)過疎化が進むと予測されている地域はそこに働く場がないため、職を求めて人が流出している側面もあると考えられることから、地域経済の振興によって過疎化を軽減できる可能性がある。そのため、産業クラスターに代表されるような「ものづくり」「人づくり」といった取組みによって、地域における雇用の場を確保するなどの対策や地域経済の活性化に資する人材を積極的に確保する対策などが必要である(福永法弘常任理事)(5)「トクホ」(特定保健用食品)以外の健康食品は、有用な成分を含むものと、そうでないものとが混在している状況にあり、現行の表示制度の下では、商品に関する機能性について、十分な情報提供がなされないまま、消費者のもとに流通している。現行の表示規制については、見直し等規制緩和の必要性があり、国が定める一定の要件の下で、有用性情報等を表示できる仕組みの整備が必要と考える(橋金作常任理事)(6)地球環境問題への貢献のため、自然の雪氷エネルギーの利活用や、雪氷エネルギーを利用して、米の備蓄倉庫を北海道、東北、北陸地域で建設することを国に提言している。国民の主食である米については、安全保障対策をしっかりと講じるべきであり、また、日本の食料基地である北海道は、こうした分野で果たせる役割も大きいものと考えている(林光繁副会長)――などの発言があった。

これに対して日本経団連側は、(1)疲弊した地方の財源確保と地域活性化に資するよう、地方消費税を拡充することが必要であり、消費税引き上げ(遅くとも2011年度には、消費税率を10%とする)後の配分を、国7、地方3の割合とすることを求めている(張副会長)(2)環境と経済を両立させつつ温暖化を解決する決め手は、革新的技術である。他方、環境税や排出量取引制度については、技術開発の担い手たる企業から技術開発の原資を奪うといった問題がある(大橋副会長)(3)産業界としても、省エネ・省資源に一層努力するとともに、優れた省エネ・新エネ製品・サービスの開発・普及を推し進め、地球温暖化防止に寄与していく必要がある。官民が連携して、革新的な技術を創出していくことで、資源高時代にも対応できる強靭な経済構造をつくっていくことが求められているのに加えて、原子力エネルギーについて、安全性の確保を大前提に、官民一体となって推進すべきである(岡評議員会副議長)(4)労働力人口の減少をはねのけて、成長を続けられる力強い経済をつくること、抜本的に国の形を変えていくということで2015年をめどに道州制を導入すること、人口減少そのものを正面から食い止めるために、抜本的な少子化対策を実行し、出生率を反転・上昇させていくこと、海外からの人材の受け入れ拡大について、本格的な検討を行うことを考える必要がある(大橋副会長)(5)日本経団連では規制改革要望の一つとして、一定の科学的な根拠を有することを前提として、健康維持・増進に有効な成分・素材を含有する健康食品の場合には、その効用表示を認めるべきだと政府に提言しているところである(池田評議員会副議長)(6)食料の内外価格差が縮小している今こそが、農業の構造改革を推進し国際競争力を強化する絶好のチャンスであり、産業界としても積極的に農業界との連携・協力を進めていくべきである。また、農業界との連携・協力の一環として地産地消セミナーを開催、企業の社員食堂での地元農産物の活用などを会員に呼びかけている(岡評議員会副議長)――と述べた。

最後に御手洗会長が、企業倫理の徹底の観点から、事業活動の総点検、ならびに企業倫理への取組み体制の強化を訴えた。

【総務本部総務担当】
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