日本経団連タイムス No.2926 (2008年10月23日)

ふるさと納税に関する懇談会開催

−制度活用の拡大めざす/自治体の取り組みなど聴く


日本経団連は14日、「ふるさと納税に関する懇談会」を開催した。2008年度から、「ふるさと」への貢献を納税面で支援するよう地方自治体への新たな寄付金税制、いわゆる「ふるさと納税制度」が導入された。同制度は、個人が任意の自治体に対して、一定額まで自由に納税先を選択できる制度であり、今回の懇談会は地域活性化をめざす日本経団連として制度活用を広げることが目的。会合では、制度の概要や自治体の取り組みについて聴いた。
概要は次のとおり。

■ 吉添圭介氏(総務省自治税務局市町村税課理事官)

ふるさと納税の意義は、(1)納税者が自分の意思で、納税対象を選択できる(2)ふるさとへの気持ちを表すことができる(3)寄付を受ける側の地方自治体間の競争が刺激される――の3点である。一部でふるさと納税は地域間格差を解消するには不十分という意見もあるが、同制度はそもそも地域間格差を解消することを目的としたものではない。地域間格差は、税体系や地方交付税制度で解消するものである。

ふるさと納税は、住民税の1割を上限として、ふるさとに寄付した分のほぼ全額が税額控除される制度である。寄付の対象地域に限定はない。また、一部には、プレゼント等による寄付金の誘致も見られるが、地方全体としてはマイナスとなるものであり、制度の趣旨に合わない。

■ 福武總一郎氏(文化・芸術による福武地域振興財団理事長)

直島や越後の地域づくりをやっているが、地域を再生する手法がないわけではなく、そのための資金がないのが実態。ふるさと納税は、納税者が自分の意思で地方に寄付できる画期的な制度である。子どもの時に受ける福祉や教育サービスは地方のコストであるが、税金を納めるようになって東京に来る。

ふるさと納税は、金額の上では大きくないが、意識の上では地域への非常に大きな応援になる。東京にいる地方出身の納税者は、積極的にふるさと納税に参加していただきたい。

(ふるさと納税関連 URL=http://www.furusato-nouzei.jp/ 参照)

■ 江端誠一郎氏(福井県総務部男女参画・県民活動課参事)

ふるさと納税は、人が移動しなくてもできる「心の里帰り」だと考えている。ふるさと納税制度の創設・導入は、福井県の西川知事の提案がきっかけになった。

福井県では、自治体への寄付の課題を検討してきた。寄付者側の気持ちに立ち、自宅で納付できる仕組みができないか検討し、全国に先駆けて自宅にいながらクレジットカードで寄付の受付ができるようにした。

■ 平田武志氏(鹿児島県東京事務所所長)

鹿児島では、県とすべての市町村が一体となって「かごしま応援寄付金募集推進協議会」を発足させた。県内市町村間での税源の取り合いが起こらないように、県外の鹿児島県出身者を対象にふるさと納税の募集活動に取り組んでいる。

また、東京、大阪、福岡にふるさと納税現地推進本部を設置するとともに、県人会などの関係団体と一体となって、ふるさと納税のPR活動を展開している。

■ 神田経治氏(大阪府にぎわい創造部国際室副理事)

大阪府は市町村との連携はしておらず、大阪府単独でふるさと納税を募集している。大阪ミュージアム構想など8つの基金があり、ふるさと納税の使途が指定できる。先般、これまで大阪とつながりのなかったタレントの爆笑問題と事務所社長の3人から合計1000万円のふるさと納税をいただいた。ふるさと納税はだれでも自分の好きなところに寄付ができる制度であるという良いPRになった。

ふるさと納税は、地方の税源を地方が奪い合うことになる懸念はあるが、橋下知事は地方自治体の首長への評価と考え頑張っていくとの考えである。

【経済第二本部税制・会計担当】
Copyright © Nippon Keidanren