日本経団連タイムス No.2927 (2008年10月30日)

シン・インド首相歓迎昼食会開催

−シン首相、日本からの投資拡大を期待


日本経団連、日本商工会議所(岡村正会頭)、日印経済委員会(大橋信夫会長)は22日、都内のホテルでインドのマンモハン・シン首相歓迎昼食会を開催した。

■ 御手洗会長あいさつ

主催者を代表してあいさつした御手洗会長は冒頭、「昨年8月のミッションでのインド訪問以来の再会をうれしく思う。日本とインドは民主主義や市場経済という共通の価値観を有する重要なパートナーである」と述べた上で、近年の8%を超えるインドの経済成長を背景に、両国間の貿易・投資が飛躍的に拡大していることに言及。その基盤が90年代前半にシン首相が財務大臣として推進した経済改革にあると述べ、シン首相への敬意を表した。

また、金融システム不安に伴う急激な世界経済の減速に触れ、「当面の緊急措置に全力を挙げることはもちろん、貿易・投資の自由化やグローバルな法的・制度的枠組みの構築を通じて、世界経済の足腰を強化するための努力がこれまで以上に求められている」と強調。日印間の経済連携協定(EPA)は有力な政策手段の一つとなり得るとの考えを示した。さらに、インドが日本にとってより魅力的な投資先となるには、EPAに加え、一層の投資・ビジネス環境整備が不可欠と指摘。シン首相がEPAの早期締結やビジネス環境の改善に、引き続き強力なリーダーシップを発揮することに期待を示した。

■ シン首相スピーチ

続いてスピーチしたシン首相はまず、今回の来日が2006年に安倍首相との間で合意した「戦略的グローバル・パートナーシップ」の強化を目的としていると述べた。

その上で、インド経済について、短期的な見通しは不透明ながら中長期的には成長の勢いを維持するだけの強靭性を有すると強調。世界経済の影響で、今年は減速が見込まれるが、いったん正常な状態に戻れば9%の成長軌道を回復するだろうとの見通しを示した。

また、日本の対外直接投資に占めるインドの割合についてはまだ少ないが、昨年の日本の対インド投資は急増していると述べた。その上で、旗艦プロジェクトとして「幹線貨物鉄道輸送力強化計画」「デリー・ムンバイ間産業大動脈構想」の実施に向け、現在検討が進められていることを紹介。その実現により、インドが世界の製造・貿易拠点として浮上する可能性を秘めていると説明した。

さらに、インドと日本の二国間貿易は拡大を続け、07年にはじめて100億米ドルに達しており、10年までには目標の200億米ドルに達するだろうとの見通しを示した。また、過去5年の間に、政府レベルにおいては、(1)05年に事務レベルで開始された「日印政策対話」が閣僚級へ格上げされた(2)06年に「日印エネルギー対話」が創設され、都市開発、観光、民間航空分野での協力イニシアティブが開始されるとともに、民間においても、両国間の経済関係発展を主導し、民間部門の視点や懸念を反映させるべく、「ビジネス・リーダーズ・フォーラム」が設立された――ことを紹介した。

一方、今後5年間にインドに必要なインフラのための投資額は5000億米ドルと推定されるが、資本市場に広がっている先行き不透明感にかんがみれば、資金の調達は困難と指摘。「日本の対印投資は増えているが、その潜在性から見るとはるかに小さいものにとどまっている。インドは成長を続ける若く、巨大な市場である」と述べ、日本からの投資拡大に期待を示した。

その上でシン首相は、今後取り組むべき分野として、(1)ハイテク分野における協力と技術移転を通じた知識経済の構築(2)包括的経済連携協定(CEPA)の早期締結(3)官民パートナーシップやジョイントベンチャーをより効果的に活用したインドのインフラ整備(4)両国の大学・研究機関間の交流活性化を通じた、能力開発、教育、先端研究・開発分野における協力拡大(5)アジア経済共同体構築に向けた努力(6)経済領域を超えた日印関係――の6点の分野を挙げた。

最後にシン首相は、「2020年、あるいは2040年のインドはより高い教育・技能水準と、はるかに大きな購買力を備え、世界経済の成長の原動力となっていることだろう。ぜひ皆様方にこの道のりのパートナーになってほしい」と述べ、インドの持続的な発展と貧困撲滅のために、日本が中心的な役割を担うことへの期待を表明した。

【国際第二本部アジア担当】
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