日本経団連の関連団体である経済広報センター(御手洗冨士夫会長)は10月22日に中国吉林省長春市の吉林大学で、24日に遼寧省大連市の大連理工大学で中国有力大学講演会を開催した。
日中両国の経済関係がますます緊密化し、お互いに重要なパートナーとなる中で、日本企業が中国社会と積極的にコミュニケーションを図り、現地での信頼を得ることは、より重要になりつつある。
一方、中国が「世界の工場」から「世界の市場」へと急速に変貌を遂げ、中国国内で競争が激化するにつれて、中国での日系企業のプレゼンスは低下してきた。日本製品の高い品質などへの評価は確立しているにもかかわらず、日系企業のブランドイメージはいまだ定着しておらず、さまざまなランキング調査を見る限り相対的に評価は低い。これは、中国において日系企業に関する情報の絶対量が不足している上に、日系企業は商品広告に注力する傾向が強く、社会貢献などを含めた企業の全体像が見えにくいためと言われている。
経済広報センターでは、多層なレベルにおける対話と交流を行うことにより、日本経済に対する理解を深めることをめざしている。その一つとして、日中交流の裾野を広げ、相互理解を促進させる上で、政策形成に影響力をもつ大学教授や、中国の将来を担う学生たちとの対話を行っている。具体的には、中国の有力大学において1994年度から企業経営者による講演会を開催しており、昨年までに大連理工大学(大連)、北京大学(北京)、南開大学(天津)、復旦大学(上海)、上海交通大学(上海)、浙江大学(杭州)、南京大学(南京)、中山大学(広州)、武漢大学(武漢)、四川大学(成都)、清華大学(北京)の計11校において延べ30回開催し、毎回100-300人前後の大学生と対話している。
今年度は、経済広報センター顧問である立石信雄オムロン相談役を講師に、「国際企業に求められる社会的責任」と題した講演会を、10月22日に当センターとしては初めての訪問となる吉林大学、10月24日には5年振りの訪問となる大連理工大学で行った。それぞれ200人、300人の定員を超える参加者が集まり、活発な質疑応答も行われた。
講演の要旨は次のとおり。
企業は単に寄付やボランティアなどの社会貢献活動として、こうした課題に取り組むのではなく、企業本来の事業活動の中に社会的責任を組み込んで取り組むことが重要である。
中国はサプライチェーンの集積地であり、そのサプライチェーンに対して、現在CSRの観点からグローバル市民社会の厳しい目が注がれていることから、中国政府は持続的経済成長に向けた「科学的発展観」「親民路線」などの政策指針の下、企業にもCSRへの取り組みを求めている。
中国におけるCSRの一環としての地域貢献活動例としては、大連国際マラソンへの協賛や高齢者対象のウオーキングラリー、30校以上の大学への実験設備の寄贈、オムロン教育基金の設立などを行ったほか、5月10日の創業記念日はオムロンデーと称して各拠点で地域へのボランティア活動を展開している。
日本経団連の関連組織である海外事業活動関連協議会(CBCC)では、2004年からこれまで3回にわたり中国にミッションを派遣、昨年は日本で「日中CSR対話フォーラム」を開催し、中国のCSR推進団体のほか、中国政府関連機関や団体、日系および欧米系企業や商工会等さまざまな人々と情報交換・意見交換をすることができた。われわれ日本企業は中国を重要なパートナーとして、これからも共に発展していきたいと考えている。