日本経団連タイムス No.2932 (2008年12月15日)

大学での人材育成の現状と課題聴く

−早稲田大学・白井総長から、教育の国際化、産学連携など/産業問題委員会


日本経団連の産業問題委員会(西田厚聰共同委員長)は11月27日、同委員会が取り組む産業人材の育成と確保についての検討の一環として、早稲田大学の白井克彦総長から、大学における人材育成の現状と課題について説明を聴くとともに、意見交換を行った。白井総長の講演概要は以下のとおり。

■ 教育の国際化

グローバル化の進展に伴い、教育面でも国際化への対応が重要となっている。教育の国際化とは、世界のどの地域でも活躍することのできる人材を育成することであり、そのためには、外国語能力はもちろんのこと、異文化への適応性、社会における使命感などの涵養も必要となる。社会科学の学問においても、これまで中心的に行われてきた歴史研究に加え、現実の問題をしっかりと分析する力を身に付けさせることも重要である。また、大学としては、社会人が専門性を磨くことのできる場を提供していく必要があると考える。その一例が、日本橋に設置しているファイナンス研究科である。

■ 大学教育のあり方、産学連携

学部レベルでは、語学力や文章力、物事の洞察力など、基礎的な学力を養うことがまず必要だと思う。こうした基礎的な学力を習得した後に、専門科目の勉強に移るのが良い。このため学部のカリキュラムは教養教育に重点が移りつつある。
人材育成について、産業界と大学の間でミスマッチがあるのは事実である。特に博士課程の学生については、ミスマッチが大きい。これを解消するためには、実社会のニーズに合った研究を行っていくことが必要だと思う。産学連携の一つの試みとして、私学連合を中核とするエネルギー工学共同大学院構想が挙げられる。これは、産業界から資金提供、講師派遣、インターンシップの受け入れなどの支援を受けながら、原子力分野の専門家を育成していくという構想で、産業界のニーズを踏まえながら最先端の原子力研究、技術者の養成を行うことができる。

■ 留学生の受け入れ

2020年までに30万人の留学生を受け入れる「留学生30万人計画」の課題としては、入試制度の改革、英語による授業の拡大、寮の増設、留学生の就職促進などが挙げられる。特に、英語でも授業を受けられる環境は重要で、英語で授業を行う早稲田大学の国際教養学部は非常に人気が高い。
また、留学生については、受け入れに加え、日本からの送り出しも進めていく必要がある。国際的には大学間競争が厳しくなっており、各国の大学が世界中から優秀な学生を集める努力をしている。留学生を育成することは、自分の国の理解者を増やすことにつながるため、国策として留学生の受け入れを進める国も多い。大学の国際競争力を高め、多くの学生が留学したいと思う就学環境を整える必要がある。

【産業第一本部産業基盤担当】
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