日本経団連タイムス No.2934 (2009年1月15日)

「マーケットからみた我が国財政」テーマに説明聴き懇談

−国債発行による経済対策と国債金利など/財政制度委員会企画部会


日本経団連の財政制度委員会企画部会(筒井義信部会長)は12月16日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、みずほ証券の高田創チーフストラテジスト、および柴崎健チーフファイナンシャルアナリストから、「マーケットからみた我が国財政」をテーマに説明を聴くとともに懇談した。説明の概要は以下のとおり。

1.国債発行による経済対策と国債金利

金融危機、景気悪化を受けて、米国をはじめ主要国は財政出動による景気対策を打ち出した。先進国の中で日本は際立って債務残高が大きく、財政状況は悪いが、財政拡大路線に転換する。
歳入面では、景気の悪化により法人税収をはじめ、税収が下振れ、2009年度予算では30兆円を大きく超える新規国債が発行される。11年度のプライマリーバランスの黒字化も厳しくなった。
こうした国債増発による金利上昇を懸念する声もあるが、実際にはバブル崩壊後の日本では国債発行額が増加したにもかかわらず、10年国債で1.5%近傍という低金利で推移した。これには、(1)日銀のゼロ金利政策と量的緩和政策のバイアス(2)金融機関の貸出の低下(3)運用難(運用先がなく、消去法で国債へ向かう)――といった背景がある。
国際的にも米国を中心に、バランスシート調整とデ・レバレッジの動きが進んでいく中で、多額の公的資金が投入され、国債発行の増加が不可避である。民間金融機関は損失処理をしつつリスク回避のため貸出を圧縮して、国債運用を増やすと考えられる。このため、当分金利は低下する可能性が高い。

2.我が国の国債保有構造と今後の国債管理政策

日本のISバランスは経常収支が黒字で、財政収支が赤字である一方、国内の民間部門が大幅黒字であり、財政赤字を国内貯蓄で賄うことができる。また、日本は長期的に円高傾向にあり、キャピタルフライトが起こりにくいことも背景として、90%以上の国債を国内居住者だけで保有する状況にある。
しかし、こうした背景を理解できていない海外の格付け機関は、日本国債を02年にボツワナ並みのシングルAに格下げした。国債の保有構造が安定しているにもかかわらず、格下げが行われたものであるが、今日、同じような状況にある米国・欧州国債への格付け機関の対応は興味深い点だろう。
国債の大量発行が続く中で安定的な国債管理政策を進めるには、金利上昇局面に備えた保有者の多様化と、日銀のサポートが重要になってくる。
日本の国債保有構造は銀行中心だったが、今後の方向性として、外国人と長い負債を抱える生保・年金などに保有構造を多様化していく必要がある。
日銀には、国債の発行・保有を支えるインフラとしての役割が期待される。日銀の国債の買入れ余力は34兆円ほどあり、長期国債の買入れオペを通じて、市場安定化をサポートすることも重要な論点だろう。

【経済第一本部経済政策担当】
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