日本経団連タイムス No.2934 (2009年1月15日)

ABAC/APEC2008活動報告会を開催

−2010年のABAC/APEC議長国に向け一層の協力呼びかけ



麻生首相(右から2人目)にABAC提言を提出する
左から相原委員、少徳委員、渡辺委員

APECビジネス諮問委員会(APEC Business Advisory Council、ABAC)の活動報告会が12月18日、東京・大手町の経団連会館で開催された。報告会はABAC日本支援協議会(会長=上島重二・三井物産特別顧問)が毎年開催しているもので、同協議会の会員企業など関係者約110名が参加し、ABAC日本委員、日本のAPEC高級実務者から、ペルーが議長国となった2008年のプロセスや今後の活動について説明を聴いた。また、関西経済連合会、大阪商工会議所の協力を得て同月24、大阪でも同様の報告会を開催し、80名を超える参加者があった。

08年のABACは4回の会議を開催し、APEC首脳へ提言を提出するとともに、11月のAPEC首脳会議と同時にリマで開催された第4回会議でABAC委員とAPEC首脳との対話を実施した。日本では、APEC首脳会議に先立つ11月10日、ABAC日本委員が麻生太郎総理大臣、中曽根弘文外務大臣、二階俊博経済産業大臣に直接ABAC提言を手渡した。一方、世界的な金融危機を踏まえ、APEC首脳・財務大臣へ金融市場の信頼回復・安定化を促す緊急書簡を合計3回にわたり発出した。

東京での報告会冒頭の上島会長のあいさつでは、首脳との対話直前に金融危機に関する緊急書簡を発出したことは、危機的な状況下でABACが一致して迅速な行動をとった点で今後の活動に極めて有意義であったとの発言があった。また大阪では、関西経済連合会の松下正幸副会長から、APECは日本、米国、中国、ロシアといった大国が一堂に会する世界最大の地域協力の枠組みとして、改めて注目を集めているとのあいさつがあった。

APECからの報告として、ともにAPEC高級実務者である外務省の平松賢司審議官と経済産業省の塩田誠審議官から、APEC首脳会議の成果について説明があり、金融危機への対処については、G20に含まれない国・地域が参加するAPECとしてG20首脳宣言を支持し、力強いメッセージを込めた首脳声明を発出した経緯や、野心的かつバランスのとれたWTOドーハラウンドの妥結につながるモダリティーの年内合意に向けた首脳の約束について説明があった。

ABACからの報告では、2年間にわたり技術・情報作業部会の部会長を務めた少徳敬雄委員(パナソニック客員)が、ドーハラウンドの交渉促進、地域経済統合の加速とアジア・太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現、投資円滑化行動計画や貿易円滑化行動計画2によるビジネス環境改善などについての継続的な取り組み、08年提言、金融危機に関する緊急書簡について総括的に説明した。技術・情報分野については、ビジネス環境改善をめざしてエネルギー安全保障と気候変動、知的財産権の保護、ICT(情報通信技術)による経済成長などを重要テーマとして取り上げたことが報告された。
さらに少徳委員は、2010年に日本がABAC/APEC議長国を担うためのABAC日本のあり方について、政策提言を行う人材の確保、日本経団連はじめ経済団体との協力関係の一層の強化と恒常化、他の専門機関からの情報支援が必要なことを強調した。
なお、少徳委員は1月にABAC委員を退き、東芝の森本泰生常任顧問と交代する予定である。

今年から金融・経済作業部会の部会長を務める渡辺喜宏委員(三菱東京UFJ銀行顧問)からは、金融資本市場の深化・強化を図るため、中南米債券市場の育成、貧困撲滅のためのマイクロ・ファイナンスの普及、年金制度の改革、環境金融の円滑化などへの取り組みに関する説明があった。さらに、金融市場の信頼回復と景気後退リスクに対しては、資金流動性確保への取り組み、現在の金融機関ごとの規制から分野を横断する規制への転換などを早急に求める緊急書簡をAPEC首脳・財務大臣に発出したこと、さらに、APEC首脳会議に向けて発出した緊急書簡ではより具体的かつ詳細な施策を提言したことが報告された。

昨年7月に石坂芳男委員(トヨタ自動車顧問)の後任としてABAC委員に就任し、今年からABAC共同議長となった相原元八郎委員(三井物産顧問)は、韓国の李明博大統領、豪州のラッド首相等と同席したAPEC首脳との対話で、G20の合意を受け、投資・貿易への障壁となる保護主義的な措置を行わないとの説明が首脳からあったこと、また自由化作業部会での検討を通じてFTAAP実現に向けての議論が活発化する中で、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドによる太平洋横断戦略的経済連携協定(P4)をそのビルディング・ブロックにする動きが注目されると報告した。

こうしたAPEC高級実務者とABAC委員からの報告に対しては、2010年までにボゴール目標に沿った貿易・投資の自由化・円滑化が実現できるのかどうか、また米国、豪州、ペルーがP4に参加表明したことへの日本政府の姿勢などについて質疑応答が行われた。

東京の報告会では、より具体的なビジネス界の課題や要望を深く掘り下げ、それを今後の活動に反映させるため、報告会第二部として、それぞれのABAC委員と個別に意見交換を行う分科会を初めて設けた。この分科会では、自由闊達な議論が行われ、全体会合と合わせ実りの多い報告会となった。


東京で開かれたABAC/APEC2008活動報告会
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