日本経団連タイムス No.2935 (2009年1月22日)

提言「東アジア経済統合のあり方に関する考え方」を取りまとめ公表

−「将来創造型」のEPAやあるべき姿などを提起
/「アジアと共に世界を支える」基本姿勢を強調


日本経団連は20日、「東アジア経済統合のあり方に関する考え方」を取りまとめ公表した。概要は次のとおり。

■ 「将来創造型」EPA

昨秋以降、金融危機に伴う世界同時不況の懸念が高まる一方、世界貿易機関(WTO)ドーハラウンドの早期妥結の可能性が見えない中、わが国は、保護主義を排し自由貿易を堅持する姿勢を内外に発信していく必要がある。加えて、金融面の痛みが比較的少ない東アジア諸国との間で経済統合を進め、世界の成長センターと目されてきた同地域の一層の発展に貢献していく努力が肝要である。
折しも、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)全体との経済連携協定(EPA)が昨年12月1日に発効し、東アジアの経済統合について、具体的なあり方を構想する時機を迎えた。わが国企業が築いてきた生産・物流ネットワークを制度的に支える従来の「状況適応型」EPAに対し、今後は、将来の経済社会の発展の道筋を切り開く「将来創造型」のEPAが求められる。

■ 東アジア経済統合のあるべき姿

ASEANおよび日中韓、インド、豪州、ニュージーランド(ASEAN+6)に台湾を加えた東アジア地域内貿易比率は約56%に達し、事実上の広域経済圏が形成されていることから、提言では、ASEAN+6をベースに、めざすべき経済統合の姿と課題を指摘している。
めざすべき姿とは、東アジア域内での原材料・部品、資金、人材の活用、生産拠点、物流経路・手段、販路の最適化を可能とする経済統合である。そのためには、経済法制等のソフトインフラが、技術協力や法整備支援などを通じて、合理的で整合性のあるものとなることが期待される。

■ EPAの深化と戦略的な展開

望まれる経済統合実現の第一歩は、域内各国との貿易や事業のネットワーク化に即した物理的な事業環境と関連制度の整備である。提言では、わが国ほか関係各国の政府に対し、EPAの質的向上と関連協定・制度、ビジネス環境、インフラの整備・改善を要望している。例えば、既存のEPAにおける関税の段階的削減・撤廃スケジュールの短縮や域内で適用される原産地規則の統一化・整合化など、物品貿易の自由化・円滑化を求めている。また、わが国が東アジア経済統合をリードしていくために、貿易・投資活動の円滑化に向けた、共通の経済法制度で律されるビジネス環境の構築やインフラ整備を中心とする政府開発援助(ODA)の戦略的活用などを訴えている。加えて、アジアと共に歩む農業を構築するための構造改革や外国人材の受け入れの拡大が不可欠であり、国内の制度改革に対するわが国の大胆な取り組みが求められる。

■ アジアと共に世界を支える

東アジア経済統合は、域内のローカルな価値の共存を認め合うとともに、外に対して開かれたものでなければならない。わが国は、「アジアと共に世界を支える」という基本姿勢に立って、アジアにおける制度面での経済統合に向けてイニシアチブを発揮すべきである。

【国際第二本部経済連携担当】
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