日本経団連タイムス No.2936 (2009年1月29日)

東海地方経済懇談会を名古屋で開催

−雇用情勢や環境問題などで意見を交換


日本経団連、中部経済連合会(中経連、川口文夫会長)、東海商工会議所連合会(東海連、岡田邦彦会長)は21日、名古屋市内のホテルで東海地方経済懇談会を開催した。懇談会には日本経団連から御手洗冨士夫会長はじめ副会長、評議員会副議長らが、中経連、東海連からは川口会長、岡田会長ら会員200名が参加、「国・地域の総力を挙げ、未曾有の危機に立ち向かう」をテーマに意見を交換した。

開会あいさつした中経連の川口会長は、現下の厳しい不況を乗り越えるための大きな柱として、同地域においては、自動車産業分野をはじめとする世界最先端の技術を有する「ものづくり」に磨きをかけるとともに、低炭素社会の実現に向けた環境問題への取り組みをはじめ、新しい技術の開発、新産業の一層の振興を図っていくことが不可欠であると述べた。

続いてあいさつした御手洗会長は、危機的な状況から脱却し、持続的な成長につなげていくためには、明確なビジョンに基づいて果断に政策を実行していくことが不可欠であることを強調。また、雇用問題に対応するためには、労使や官民が協力して雇用の安定を図り、働く場を創造していく必要があることを指摘した。

■ 活動報告

第一部の活動報告では、日本経団連側から、三村明夫副会長が「地球温暖化と環境問題への取組み」、渡文明副会長が「豊かさを実感できる住生活の実現に向けて」、佐々木幹夫副会長が「対外経済戦略に関する経団連の取組み」、古川一夫副会長が「実効的な電子行政の実現に向けて」、大橋洋治副会長が「雇用の安定を重視した春季労使交渉に向けて」について説明した。

一方、中経連、東海連側からは、まず神野信郎中部経済連合会副会長が、昨年9月に策定した「中経連中期活動指針ACTION2015」について説明。(1)中部州として自立した地方分権地域(2)世界的な産業・科学・技術の中枢拠点(3)豊かで、魅力と個性に溢れ、安全・安心な地域(4)世界に開かれた国際交流圏(5)地球に優しい環境先進地域――をめざした地域づくりを進めていくことが、広域経済団体の責務と認識していると述べた。

続いて「環境への取り組みとCOP10」について発言した名古屋商工会議所副会頭の安井義博氏は、地球温暖化対策は、コスト削減や業績改善、経営革新につながるものであり、中小企業が現在の苦境を乗り越え「低炭素経営」をめざすことが大きな課題であると指摘した。また、2010年に名古屋で開催される生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)を積極的に支援し、成功に導きたいと述べた。

■ 自由討議

第二部の自由討議では、中経連、東海連側から、(1)道州制の実現によって変わる国と地方の姿を、広く国民にわかりやすい形で示し、議論を喚起する必要がある(2)円高対策を理由に、国内の「ものづくりの空洞化」が始まれば国内経済のさらなる悪化が懸念される(3)法人実効税率の引き下げや、国民全体が広く公平に負担し、景気変動に左右されにくい消費税の拡充を行うべき(4)高度な技術に裏打ちされた航空機、ロボット、環境分野など次世代産業の創出に努めることが中部・東海地域の大きな課題であり、そのためには、ナノテクなど高度な先端科学技術の活用やイノベーションの創出を加速していくことが必要(5)東海北陸自動車道の全線開通によって観光産業の振興など経済面にとどまることなく、社会全般にわたって沿線地域住民の大きなネットワークが構築された(6)広域的な交流・連携の促進を図るため、三重県内の幹線道路網をおおむね完成することをめざし、重点的に整備を図っていく必要がある――などの意見があった。

これに対し日本経団連側が、(1)政府・与党に対して早期に「道州制推進基本法」の検討に着手することを求めている(柴田昌治評議員会副議長)(2)高付加価値の創出に挑戦する中小企業への政策支援が不可欠(前田晃伸副会長)(3)足元の景気回復と並行して税制抜本改革が着実に実施されるよう、引き続き政治に働きかけていく(森田富治郎副会長)(4)政府等の動きを注視しつつ、地域発のイノベーションを原動力とする産業競争力の強化にこれまで以上に取り組んでいきたい(槍田松瑩副会長)(5)東海北陸自動車道の開通や中部国際空港の整備など交通インフラの整備が、中国や韓国との観光協力に大きく貢献し、中部各地の観光地の活性化につながる(清水正孝副会長)(6)東海と北陸が高速道路により直接結ばれることで企業が国際物流のルートを見直すことになれば、同地域がアジアのゲートウェイとしての機能を複合的に有することになる(岩沙弘道副会長)――と発言した。

総括で御手洗会長は、現下の危機を克服し、経済を活性化させるための課題は山積しており、これからも必要な改革に大胆に取り組んでいかなければならないと強調した。

【総務本部総務担当】
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