日本経団連タイムス No.2937 (2009年2月5日)

関西会員懇談会を大阪で開催

−未曽有の危機克服に向けて意見交換


日本経団連は1月22日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。懇談会には、御手洗冨士夫会長はじめ、副会長、評議員会副議長や関西地区の企業会員代表者約370名が出席、「国・地域の総力を挙げ、未曾有の危機に立ち向かう」をテーマに意見交換を行った。

開会のあいさつで御手洗会長は、1年を通してマイナス成長が予想される極めて厳しい環境下にあるが、危機的な状況から脱却し、持続的な成長につなげていくためには、明確なビジョンに基づいて果断に政策を実行していくことが不可欠であると強調。雇用問題については、官民が協力して雇用の安定を図り、働く場を創造していく必要があると同時に、雇用保険の対象者拡大や失業給付等の拡充など、セーフティネットを早急に拡充することも重要であると述べた。

当面の政策課題テーマに

■ 意見交換1

意見交換1では当面の政策課題をテーマに、まず森田富治郎副会長が、最近の経済情勢について発言。わが国経済の問題点として、外需への依存が大きかった点や、社会保障制度など国民生活の安心・安全を支えるセーフティネットにほころびが生じている点を指摘した。野村明雄大阪ガス会長は、(1)わが国のモノづくり産業に一層磨きをかけるためのイノベーション投資や、真に必要な中心部の高速道路の整備などへの、一定の財政出動を期待したい(2)今後も経済界として、設備投資や研究開発を促進する税制の拡充、法人税率の引き下げ、工場立地規制のさらなる緩和といった面での提言活動を一層強めていく必要がある(3)地方分権改革の必要性について、今後も引き続き、声を大にして政府に働きかけてほしい――との3点を挙げた。これを受けて森田副会長は、優れたイノベーションに裏打ちされたモノづくり産業こそがわが国経済最大の強みであり、これに一層磨きをかけていくことで、次の成長への布石としていかなければならないなどと述べた。

続いて地球温暖化と環境問題への取組みについて三村明夫副会長が、日本経団連としては、国際競争力や雇用の確保の観点から、公平で、コスト面も含め実行可能性に裏打ちされた中期排出削減目標の設定を引き続き強く求めていくとの考えを示した。カネカの菅原公一社長は、太陽電池のクリーンさを強調、太陽電池産業において日本が世界に後れを取ることのないようオール日本で戦い抜くための体制構築を、政府に働きかけていく必要があるとの考えを述べた。また、日立造船の古川実社長は、海外への技術移転、グローバル化の一層の進展に対応する柔軟な経済構造の構築、知的財産の保護やバイオマス利活用のためのインフラ整備を要望した。これを受けて三村副会長は、実効ある排出削減のためには、技術を途上国に移転する必要があるが、その際、ホスト国において知的財産権が保護されることが不可欠であると述べた。

■ 特別報告

続いて日本経団連から、佐々木幹夫副会長が「対外経済戦略に関する経団連の取組み」、中村邦夫副会長が「道州制導入に向けた取組み」、前田晃伸副会長が「規制改革の更なる推進に向けて」、大橋洋治副会長が「雇用の安定を重視した春季労使交渉に向けて」、奥田務評議員会副議長が「人口減少に対応した経済社会のあり方」についてそれぞれ、特別報告を行った。

関西経済などめぐり論議

■ 意見交換2

意見交換2では関西地区会員から、関西経済の課題について、(1)関空から入り成田から出る、あるいは成田から入り、関空から出るというイン、アウトの戦略的な空港政策による観光振興策が必要。個々が競い合うより成田、関空の両空港の連携・推進を国策とすべきだ(佐藤茂雄・京阪電気鉄道CEO)(2)関西の高速道路ネットワークについては、名神・近畿道などでの日常的な渋滞の発生や設備の老朽化、国際空港や港湾につながる要所での途切れた区間の存在等が障害となり、関西圏が持つ魅力や経済活力等のポテンシャルを十分に生かしきれていないのが実情である。高速道路ネットワークの形成を戦略的に進めるとともに、利用しやすい高速道路料金の実現による既存高速道路の有効活用、物流コストの低減に取り組む必要がある(安部正一・住友倉庫社長)(3)住宅は量から質への政策転換が図られつつある。ゆとりある良質な住宅は、少子・高齢化問題、教育問題、環境問題解決などに資するものである。また、内需拡大の決め手にもなる。住宅関連税制を含む税制改正法案の早期成立が望まれる(和田勇・積水ハウス会長)――などの意見が出た。

こうした意見に対して、(1)大阪、京都、東京までを一体化させた海外旅行者向けツアーは広域連携を具体化する魅力的な構想である(岩沙弘道副会長)(2)高速道路ネットワークの形成は大変重要な課題であり、地域における国際物流インフラの総合的なグランドデザインを描きつつ、高速道路に対する地域の具体的なニーズを明確にすることが肝要(槍田松瑩副会長)(3)内需拡大の大きな柱の一つが関連産業への波及効果の大きい住宅投資である。新たな住宅税制が、内需主導型の景気回復の下支え役となるとともに、省エネ・創エネ住宅の普及、良質な住宅ストックの形成に大きく貢献することを期待したい(岩沙副会長)――とのコメントが示された。

■ 総括

総括で御手洗会長は、「経済の活性化、持続的な経済成長を獲得するためには、政治と経済は車の両輪でなければならない。現在の政治状況は非常に不安定だが、各党にはいたずらに政局に走ることなく、国民本位、国益優先の観点から議論を尽くした政策本位の政治を実現してほしい」と要望した。

◇◇◇

なお、関西会員懇談会に先立ち22日午前、御手洗会長は大阪府庁を訪問して「関西州」実現を掲げる橋下徹大阪府知事と会談し、道州制の導入をめぐり意見交換を行った。

大阪府の地方分権改革や道州制に関する取り組みについてはホームページ(URL=http://www.pref.osaka.jp/seisaku/tihobunken/tiiki_index.htm)を参照のこと。

【総務本部総務担当】
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