日本経団連タイムス No.2937 (2009年2月5日)

経済協力における官民連携の進捗状況やわが国ODAのあり方聴く

−国際協力委員会


日本経団連の国際協力委員会(槍田松瑩委員長)は1月20日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、外務省の木寺昌人国際協力局長から、経済協力における官民連携の進捗状況や、金融危機下でのわが国政府開発援助(ODA)のあり方について説明を聴くとともに意見交換を行った。
木寺局長の説明概要は次のとおり。

■ 平成21年度ODA予算

一般会計のODA予算は1997年にピークに達した後、2009年までに4割減少した。他国に目を転じると、01年には、9・11テロの後、ODAを増加させた米国に抜かれ、日本は2位に後退した。さらに、06年には英に抜かれ3位、07年は仏独に抜かれ5位に転落した。予算削減により企業のODAへの関心が薄れている状況下、予算を増やし、手続きにかかる期間を短縮することでODAを見直していただくようにするのが自分の仕事と考えている。ODA予算増の必要性については、企業からもぜひ声を上げていただきたい。

■ 官民連携の進捗状況

官民連携は日本のODAの本来の姿である。例えばタイのパタヤ近くの臨海工業地帯では、工業団地の造成、電力と水道の整備、人材の育成をODAで行った上で日本企業が進出、今ではタイ経済の基盤を支えている。
また、TICAD4の準備を通じ、企業のアフリカへの関心は高く、投資を検討している企業が多いことを改めて確認した。アフリカへの投資はハイリターンであるが、同時にハイリスク、ハイコストでもあり、官民連携でリスクとコストを低減することが出発点である。例えば企業の工場建設にあたって、ODAで港や道路を整備することが官民連携の最も典型的なかたちである。また、大型インフラに限らず、無償資金協力も活用し小規模な協力も進めていく。このような事例はアフリカのみならず、アジアの後発国でも手がけたい。
関係省庁やJICAに設置した官民連携窓口には、昨年末時点で65件の官民連携案件の提案・相談が寄せられており、その過半数はアフリカ向けである。現在、日本企業の直接投資の促進につながる可能性をも念頭に、ガーナおよびタンザニアにおける港湾・輸送インフラ整備にかかる予備的調査を実施予定である。
また、新JICAでは、円借款、無償資金協力、技術協力の3つの調査を協力準備調査という1つのカテゴリーに一本化した。今後、100件の開発調査をアフリカで行う予定である。TICAD4で福田首相(当時)はアフリカ向けODAの倍増だけでなく、民間投資の倍増支援の方針も打ち出している。OOFや貿易保険なども含め、あらゆる手段を活用し、アフリカ向け民間投資の倍増に協力をお願いしたい。

■ 金融危機への対応

昨年11月15日にワシントンで開催された金融・世界経済に関する首脳会合(G20)で麻生首相は、IMFへ最大1000億ドルの資金融通を行う用意があること、また、日本政府と世界銀行が合わせて30億ドルを拠出し、途上国の金融セクターの不良債権処理に役立てることを表明した。米欧で景気が後退する一方、IMFの見通しでは、中国、インド、ASEAN諸国は高い成長率が予想されており、わが国はODA、OOF、民間資金の3つを総動員し、開かれた成長センターとしてのアジアを後押しすることが重要である。

■ クールアース・パートナーシップ

昨年1月末のダボス会議で福田首相(当時)がクールアース・パートナーシップを発表した。これは途上国に配慮した日本の支援策であり、(1)わが国の提唱するクールアース推進構想を評価する(2)2013年以降の国際的枠組みを構築する交渉に途上国が正式に参加する(3)温室効果ガスの排出削減と経済成長を両立させ途上国でも気候の安定化に取り組む――の3点に同意すれば、総額100億ドルを途上国の気候変動への適応や緩和に充てるというものである。現在71カ国で取り組みが進んでおり、うち20カ国では具体的支援策を実施中である。

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国際協力委員会では引き続き、ODAをはじめとするわが国の国際協力の進め方について検討を行い、4月に意見書を取りまとめる予定。

【国際第二本部国際協力担当】
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