日本経団連タイムス No.2939 (2009年2月19日)

今後の社会保障制度、あり方をめぐって懇談

−社会保障制度改革への視点など/社会保障委員会


日本経団連の社会保障委員会(森田富治郎委員長、井手明彦共同委員長)は4日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本経済新聞社の渡辺俊介論説委員から、今後の社会保障制度のあり方について、説明を聴くとともに懇談した。

渡辺氏は、日本の社会保障制度の現状に触れた上で、「麻生内閣は、中福祉・中負担をめざすとしている。政府提出の資料において、保険料は既に中負担の段階に位置付けられるとする一方、税は低負担にとどまっているとの認識を示し、税負担を増やす方向性を打ち出した点は、評価してよいのではないか」と指摘した。

次に、社会保障制度改革に取り組む上での視点として、「現内閣では、社会保障制度の機能強化を掲げている。おそらく医療・介護を中心に機能強化に取り組むのではないか。医療にしても、病院の閉鎖が起きているし、産科・小児科・救急医療で医者が足りない状況にある。病気や介護を要する状態にいつなるかわからないことなどに鑑みれば、やはり医療・介護に重点をおくべきではないか。また、わが国では障害関係の支出が少ないといった面も考慮する必要がある」と述べた。

その上で、増大する医療費をどのように負担すべきかについて、「現在の国民医療費約33億円のうち、保険料が占める割合は約50%である。保険料で賄う部分は、既に相当な水準にあることから、今後は税負担を上げていくべきである。医療・介護等に対応していくとなると、消費税も最低15%程度は必要となろう。ただ、税率を上げていくのであれば、少なくとも社会保障制度を『このように構築する』というメッセージが政府から示されてよいと思う」と述べた。

医療提供体制に関しては、「財政の確保先にありきの議論があるが、むしろ提供体制をいかに改革するかが重要である。改革を進める上で、都道府県が策定する医療計画が大きな意味を持つが、節約も含め、どのような体系を組むか明らかにした上で、必要な財源をつけていくべきである。医師不足という緊急課題への対応としては、女性医師に対する支援、メディカルスクールの創設による医師の養成などの対応も考えられるのではないか」と指摘した。

このほか、今後具体論が必要な医療の分野として、混合診療を取り上げ、「混合診療を進めていく上での議論が進んでいない。何を保険から外すかといった具体論を取り上げないと、議論が進展しない」と指摘した。

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当日は、渡辺論説委員との懇談後、提言案「国民全体で支えあう社会保障制度を目指して」について審議し、委員会として了承した。

【経済第三本部社会保障担当】
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