日本経団連タイムス No.2941 (2009年3月5日)

四国地域経済懇談会、徳島で開催

−未曾有の危機克服へ意見交換



四国地域経済懇談会であいさつする御手洗会長

日本経団連(御手洗冨士夫会長)と四国経済連合会(四経連、大西淳会長)は2月18日、徳島市内のホテルで第45回四国地域経済懇談会を開催した。懇談会には日本経団連から御手洗会長はじめ副会長らが、四経連からは大西会長ら会員180名が参加、「国・地域の総力を挙げ、未曾有の危機を乗り越える」をテーマに意見を交換した。

開会あいさつした四経連の大西会長は、四国はこれまでも、人口流出や高齢化、財政の削減といった厳しい環境の中にあったが、今回の経済危機によってさらに追い討ちをかけられ、新しい時代へ向けてどう生き抜いていくかが強く問われていると述べた。その上で、これからの四国が持続的に発展していくための基本課題として、(1)四国の特性や強みを生かして地域経済の活性化を図ること(2)道州制を実現すること(3)インフラ整備を推進すること――の3点を挙げた。

続いてあいさつした御手洗会長は、日本経済は1年を通してマイナス成長が予想される厳しい環境下にあるが、危機的状況から脱却し、持続的な成長につなげていくためには、明確なビジョンに基づいて果断に政策を実行していくことが不可欠であると強調。こうした観点から、日本経団連では、新たな雇用創出と成長力強化をねらえる国家的なプロジェクトを「日本版ニューディール」2月12日号既報)として提言したことを説明した。

■ 活動報告

第一部の活動報告では、日本経団連側から、渡文明副会長が「税制改正をめぐる動向」、森田富治郎副会長が「当面の経済運営」、大橋洋治副会長が「雇用の安定を重視した春季労使交渉」について説明した。

一方、四経連側からはまず、山下直家副会長が、「道州制・四国州の実現に向けて」発言し、(1)四国の区割りについては、4県からなる四国州が適切である(2)地方の道州がしっかりと運営できるように、道州間の財政調整が確実になされる仕組みが必要である(3)道州制導入に先駆けて、地域の自立や競争に必要なインフラ整備を国の責任で推進していくことが重要である(4)道州制の必要性やメリットが十分理解されるよう、国民的議論を喚起すべきである――と述べた。

続いて「四国の個性を発揮した競争力のある地域づくり」について発言した麻生俊介副会長は、「技術力に裏打ちされた競争力のある産業を育てるため産学官が連携し、事業化やクラスター化に向けた取り組みが進められている」「4県共同による販促活動やアンテナショップの設置など四国一体となった取り組みを進めるよう提案した」「四国の歴史文化遺産に触れ、親しみやすい環境づくりをめざした『歴史文化道』事業を進めている」と説明した。

西山昌男副会長は「地域の自立と競争力を支える社会基盤整備の促進」について発言し、四国にとっての最優先課題の一つとして、四国4県を8の字型に結ぶ高速道路「四国8の字ネットワーク」の早期実現を挙げた。西山副会長は、四国東南部や西南部は高速道路がつながっていないことを指摘し、「これが整備されないことには、企業誘致・観光誘致、4県連携による地域づくりもままならない。阪神圏・東京圏など大都市への一次産品の販路拡大にも不可欠」と訴えた。

道州制・観光・環境など

■ 意見交換

第二部の意見交換では、四経連側から、(1)道州制について自治体には「財源の裏付けがないまま権限だけ移譲され、国の財政赤字削減の手段に使われるのではないか」などの警戒感が生まれているようだ(2)徳島県は産学官が一体となって、LEDを核に光産業の集積をめざす「LEDバレイ構想」に取り組んでいる。この構想には強みとなる資源を活かし、それを活かせる人材を育て、産業活性化に地域を挙げて取り組むとともに、魅力ある街づくりにもつなげるという総合的な行動計画がパッケージされている(3)国も観光に本腰を入れているが、人を引き付けるために大切なことは、その地域でしか味わえない独自の資源を活かすことに尽きる。その際、地元のことを一番知っている地域に住む者が主体性を持って取り組んでいくことが何より重要である(4)これまで「環境問題」は経済成長の制約要因との見方があったが、100年に1度とも言われる経済危機の中で「環境ビジネス」に新たな活路を求めるという大きな政策転換が世界的に行われようとしている。日本の得意とする環境ビジネスを一層振興していくべきである(5)今後の四国を考えると、各々の地域ならではの強みを武器に、成長著しい東アジア市場を開拓していくことが持続発展に欠かせない。既に四国各県では農産物や加工食品の輸出促進、外国人観光客の誘致などの取り組みを積極化させている(6)徳島の道路事情の悪さは産業振興を図る上で大きな足かせとなっており、県経済の浮揚発展を図るため一刻も早い整備が喫緊の課題となっている。観光面でも広域的な観光ルートとしての魅力を高めるために、高速道路は不可欠である。道路整備、とりわけ「四国8の字ネットワーク」の早期完成が望まれる――などの意見が出た。

これに対し日本経団連側は、(1)全国的に一定水準の行政サービスを保障するため国から道州に交付する「安心安全交付金」や道州間の水平的な財政調整を行うための「地方共有税」などの創設を提案している(氏家純一副会長)(2)国に対し、地域の広域連携の取り組みを支援すべく、企業立地促進法を拡充するとともに道州制特区推進法の改正により、広域連合を活用した道州制の先行的実施を可能とすることなどを求めていく。同時に、対日投資の促進や地域資源を活用した活性化策の国際展開の充実など、国として取り組むべき課題を示す(岩沙弘道副会長)(3)内需主導型の景気浮揚を図る上で、観光が重要な役割を担っていることから、国内観光の振興方策についても本格的な検討に着手している。国内観光の振興を進める上では、関係自治体や地域の経済団体による広域連携がどうしても必要(佃和夫副会長)(4)環境と経済成長の両立の具体化にあたっては、それによって個人がどの程度のコストアップを覚悟し、企業がどの程度の設備投資をしなければならず、国がどの程度財政を支出しなければならないのかということを前提として議論を行うべき。また、国際的に厳しい交渉を行う必要が生じてくる(三村明夫副会長)(5)東アジア経済統合をリードしていくためには、わが国もグローバル化の進展に対応して、ヒト、モノ、カネ、サービスの国際市場への統合を促進していかねばならない。とりわけ、アジアとともに歩む農業を構築するための構造改革と外国人材の受け入れの拡大が重要であり、国内制度改革に対するわが国の大胆な取り組みが求められる(氏家副会長)(6)現在のような不況のときこそ「四国8の字ネットワーク」など本当に必要なインフラに重点的な投資を行うべきである。港湾をはじめとしたインフラの国際競争はますます激化しており、国際物流におけるわが国のハブ機能を強化する必要性が高まっている(渡副会長)――と発言した。

■ 総括

御手洗会長は総括の中で、「現下の危機を克服し、経済を活性化させるための課題は山積しており、これからも必要な改革に大胆に取り組んでいかなければならない。国内での努力に加え、官民が双方で国際的な連携を強化し、一丸となって取り組むことが、経済の活性化に向けた効果的な処方箋であることは明らかである」と述べた。

【総務本部総務担当】
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