日本経団連タイムス No.2943 (2009年3月19日)

「今後の財政運営のあり方」を提言

−今後の財政健全化目標や歳出入改革のあり方示す/経済危機からの脱却など、基本的視点に


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は17日、提言「今後の財政運営のあり方」を公表した。同提言の概要は次のとおり。

■ 基本的考え方

当面、経済危機からの脱却を図るため、大規模な経済対策を中心に政策を総動員しなければならない。一方、厳しい財政状況を踏まえれば、経済状況が改善した後、中長期的な財政規律を維持しなければならない。

現在、世界同時不況の発生を契機に政府の果たす役割が再認識されつつある。とりわけ、雇用や社会保障のセーフティネットを整備し、国民生活の安心・安全が図られれば、中長期的な経済活性化に資することになる。

こうした点を踏まえ、今後の財政運営における基本的視点として、(1)経済危機からの脱却(2)成長基盤の整備(3)国民生活の安心・安全の確保(4)中長期的な財政規律の維持――の4点が重要となる。

■ 今後の財政健全化目標のあり方

2011年度に国・地方の基礎的財政収支を黒字化するとの政府目標の達成は事実上困難になりつつあるが、国内外からの財政運営に対する信頼を確保し続けるためには、政府の財政健全化に対する姿勢を明確に維持することが重要である。

そこで、当面、厳しい経済状況からの脱却をめざしつつ、今後10年程度で債務残高対GDP比率の上昇を食い止めるよう、利払い費を含む財政収支の改善を図ることを財政健全化目標として掲げるべきである。基礎的財政収支の黒字化は、財政収支改善に向けての中間目標として位置付けるべきである。

■ 歳出入改革のあり方

歳出面では、第一に、雇用の安定・創出と将来の成長に向けた投資として、経済危機からの脱却に向けた即効性のある需要創出策、雇用のセーフティネットの整備、日本版ニューディールの実施、政府研究開発投資の拡充、基幹インフラの整備等が必要である。第二に、医療・介護制度の機能強化、基礎年金の税方式化、少子化対策の拡充など、安心で信頼できる社会保障制度の確立が求められる。第三に、道州制の導入に向けて、国の地方支分部局の整理統合等の地方分権改革の推進、地方税・財政の抜本的な改革が必要である。第四に、電子行政の実現、行政の合理化・無駄の排除の徹底が求められる。

歳入改革については、社会保障制度の持続可能性の向上、安定した歳入基盤の確立を図る観点から、経済情勢を見極めつつ、消費税を含む税制抜本改革を行うことが不可欠である。同時に税制面から成長力を強化するため、イノベーション促進のための税制措置や法人実効税率の引き下げ等、法人所得課税の見直しが必要である。

また、財政規律を確保する手法として、財政資金を有効活用するための予算制度改革に取り組むべきである。

【経済第一本部経済政策担当】
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