日本経団連タイムス No.2944 (2009年3月26日)

金融庁から今後の金融政策への対応を聴き意見交換

−金融制度委員会


日本経団連は16日、東京・大手町の経団連会館に、金融庁の内藤純一総務企画局長を招き、金融制度委員会(奥正之共同委員長)を開催した。内藤局長から、現下の金融情勢や今後の金融政策への対応などについて説明を聴くとともに意見交換した。内藤局長の説明は概要以下のとおり。

世界的な金融市場の混乱による金融システム全体の損失は、今年1月のIMFの試算によれば、約2兆2000億ドル(約198兆円)に達すると見込まれる。一方、日本の金融機関は、10年前の金融危機を経た教訓を活かしてリスク管理を徹底していたこともあり、その損失額は欧米に比較すれば、かなり小さい。しかし、世界経済の低迷が日本の実体経済への直接的な悪影響を及ぼしており、信用コスト増大による信用収縮に注意しなければならない。諸外国の金融危機対応を整理すると、不良債権買取り、銀行保有資産の将来発生損失の政府補償、銀行債務の政府保証、公的資金注入、中央銀行による流動性供給、預金者保護に大別できる。

今年2月のG7財務大臣・中央銀行総裁声明では、成長と雇用をサポートし、金融セクターを強化するためにあらゆる政策手段を用いて協働することを再確認し、国際金融システムの根本的な改革のため、関係国際機関(IMFと金融安定化フォーラム)の協働の強化、国際的な経済・金融活動の適切性・健全性および透明性に関する共通の合意原則と基準の作成、規制枠組みの改革の加速化を進めていくこととした。さらに、今月14日のG20財務大臣・中央銀行総裁声明では、財政手段も含めたあらゆる措置を取ることとされ、金融危機のみならず実体経済の対応が前面に出ているのが特徴である。ただし、金融規制にも積極的な欧州と、基本的に市場の機能活用によって回復を図りたい米国との間に隔たりがあり、4月のG20首脳会合に向けて議論すべき課題である。

今般の情勢を踏まえた金融庁における政策対応としては、まず金融円滑化・市場安定化対策として、グローバルな金融資本市場の混乱に伴う信用収縮がわが国の実体経済へ悪影響を及ぼすことを和らげるための施策を実施した。(1)金融機能強化法の活用による中小企業金融の円滑化(2)生命保険会社のセーフティネットにおける政府補助の延長(3)中小企業向け融資の貸出条件緩和が円滑に行われるための措置(4)自己資本比率規制の一部弾力化(5)金融円滑化に向けた金融機関に対する要請(6)空売り規制の強化(7)自己株取得に係る市場規制の緩和――などが挙げられる。

次に、規制・監督枠組みの整備として、(1)わが国金融システムへの影響の把握・分析(2007年9月期〜)(2)証券化商品の追跡可能性の確保、金融商品取引業者に対する早期警戒制度の導入(08年4月から適用)(3)銀行等の監督における市場リスク管理、信用リスク管理、情報開示に関する着眼点の充実(08年8月から適用)――を既に講じてきたが、今後も必要な規制・監督の枠組みを整備していく。今通常国会においては、金融商品取引法の改正により、格付会社に関する公的規制の導入等の措置を講ずる予定である。

また、3月10日には、年度末を控え、中小企業はもとより、中堅・大企業等の業況や資金繰りも厳しさを増している状況を踏まえ、(1)金融円滑化のための特別ヒアリング・集中検査(2)緊急保証に関わるリスクウェイトの見直し(10%→0%)(3)コベナンツ対応の弾力化の促進、市場型間接金融(シンジケート・ローン等)の活用の要請(4)金融機能強化法の活用促進――を講じることを公表した。

さらに、銀行等の株式の保有の制限等に関する法律において、従来、06年9月末までとされていた銀行等保有株式取得機構による株式買取りについて、12年3月末まで延長し、機構による株式買取りを再開するなどの内容を盛り込んだ改正案が、議員立法として1月に国会に提出され、3月4日に成立、同12日から機構による買取りが開始されている。

【経済第二本部経済法制担当】
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