日本経団連タイムス No.2947 (2009年4月16日)

チャベス・ベネズエラ大統領と懇談



左から御手洗会長、チャベス大統領、小島委員長

日本経団連は6日、東京・大手町の経団連会館でベネズエラ・ボリバル共和国のウゴ・ラファエル・チャベス・フリアス大統領との懇談会を開催した。日本経団連から御手洗冨士夫会長が歓迎あいさつをし、小島順彦日本ベネズエラ経済委員長が座長を務めた。懇談会におけるチャベス大統領の発言要旨は次のとおり。

ベネズエラの現況などを説明/日本との経済関係強化に期待

今朝の麻生総理との会談で、両国経済関係を強化するためのワーキングコミッティーを設置することで合意した。経済、工業、エネルギー、産業、金融などの分野で戦略的提携を速やかに実現していくために、工程表を作成して対応していきたい。
現在は世界全体が深刻な経済危機のただ中にある。その危機に対処するために、精力的かつ効率的にプロジェクトを企画、実施していく。その際、国際的な協力関係を軸に進めたい。
ベネズエラは元来、非常に豊かな国であり、無限大ともいえる天然資源を有している。20世紀の約60年間は、世界最大の石油輸出国であった。そのほかに原料や半加工品を大量に生産し輸出していた。20世紀の初め、既にコロンビアとの国境でラ・ペトロレアという石油会社が、軽油とその副産品を手作業で製造していた。ほとんどは地元で消費したが、一部をカリブ諸島に輸出していた。その後、ベネズエラに多国籍企業が進出し、第一次世界大戦が始まろうとしていたころ、工業用に採掘した大量の石油を主に米国に輸出していた。1930年代の大恐慌が到来する前にベネズエラは世界一の石油輸出国になり、70年くらいまでその座にあった。現在も米国に日量150万バレルの石油を輸出しており、両国の経済関係は順調である。

変革により力を得経済成長続ける

ベネズエラは80年代後半から90年代終わりにかけて暴風雨の時代を迎え、貧困層が60%に達した。完全失業者と半失業者を合わせると全人口の半分近くに上り、何百万人という家族が住宅のない悲惨な環境で生活せざるを得なかった。政治的、社会的、経済的に不安定な状況であり、軍や民衆の反乱が発生した。99年に私が大統領に就任した時は、混乱の極みであった。
第二次世界大戦敗戦後、日本人は休む間もなく国家の復興に尽力し、いまや安定した政治体制の下、世界有数の経済大国として新世紀を迎えた。これは日本に素晴らしい企業、指導者、国民がいたからであり、尊敬の念を表したい。
私が就任した当時、ベネズエラは国の健全な制度、道徳律、精神性、さらには自尊心までもが破壊されていた。共和国の根幹である経済は崩壊してしまった。社会は活力を示した時期もあったが、見る影もなく低迷した。現在、ベネズエラは再構築されつつあり、今後についても楽観的な見方をしている。過去10年間、クーデター等のさまざまな脅威や危険を経験してきたが、いまや変革により力を得ようとしている。
ベネズエラは過去5年間継続的に年10%の経済成長を遂げてきた。99年から2009年にかけてGDPは3倍になった。これにより、所得を再配分し、過去10年間で、貧困層は半分以下になった。GDPの多くを国民にとって基本的に重要な教育、健康、衛生に充ててきた結果である。
われわれは新しい工業モデル、農業モデル、食糧増産モデル、エネルギー生産モデル、石油、ガス、石油化学の産業モデルをつくりたいと考えている。規模のさまざまな、多くのインフラプロジェクトが計画されており、既に投資をしている日本企業もある。今回の訪日を契機に二国間の経済関係がさらに強化され、日本からの技術協力と投資が進むことを願っている。
ベネズエラは世界最大規模の石油埋蔵量を持つ国であり、日本とパートナーシップを結ぶ最高の条件を満たしている。ベネズエラの石油の可採埋蔵量は急増する世界の石油需要を満たすことができる。外貨準備高も10年前は100億ドルにすぎなかったが、現在400億ドルに達している。
オリノコ川流域の油田開発では関連法を制定した。流域は27から29の鉱区に分かれ、世界各国の石油会社が進出しているが、日本企業の名前はない。日本は日量500万バレルの石油を消費しており、今世紀においてもさらに遠い将来においても、石油やガスの安定供給を常に必要としている国である。

日本の石油供給源多様化に貢献へ

日本とベネズエラは地理的に遠いが、わが国は中国との協力の経験がある。日本に対しては今後、中国と同様に10年間で日量50万バレル、80万バレル、さらに100万バレルを供給したい。日本の石油供給源の多様化に貢献したい。これはベネズエラにとっても輸出先の多様化につながる。
天然ガスについても同様の戦略を持っている。ベネズエラは世界第5位の天然ガス埋蔵量を有している。これまで随伴ガスを無駄に燃やしてきたが、何十億ドルもの投資を行い、ガス田の開発を行っている。日本企業は関連の陸上、海上の各種プロジェクトに参加している。そのほか、さまざまな液化ガスプロジェクトに日本の技術が提供されている。北部のガスを日本に輸出したいので、エネルギー関連、石油化学、石油ガスの日本企業には、政府間の協力を基盤に、ぜひ共同開発への参加をお願いしたい。オリノコタールやガス田の開発、技術供与、投資で協力を得たい。これらを通じて両国はエネルギー分野におけるパートナーシップを結ぶことができる。
それ以外にもベネズエラにはさまざまなプロジェクトがあり、もっと強力で体系的かつ長期的な日本の参加をお願いしたい。例えば鉄道のプロジェクトで日本企業の技術を活用したい。住宅建設プロジェクトでは100万戸の住宅を必要としている。日本は道路、火力・水力発電、配電、自動車、家庭用のガス技術も持っている。病院施設も必要であり、既に日本の医療機器を使用し始めている。
石油化学分野では、肥料工場の既存施設の拡張に加えて必要な設備を新設している。農産品加工も有望であるし、製鉄業では第二の工場の建設を開始した。鉄鉱石は100年分の埋蔵量がある。アルミニウム産業はこれまで問題を抱えていたが、さまざまな技術を投入し生産拡大を図る必要がある。今後発展する産業分野は、木材加工、製紙など数限りなくあるのでぜひ注目してほしい。
相手国と創設した基金を活用してプロジェクトを進める方式がある。例えば、70〜80億ドルを要する鉄道建設プロジェクトでは中国との開発基金を活用している。このケースは中国側が2年間で80億ドル、ベネズエラ側が40億ドルを拠出するものである。われわれは同様の基金創設を日本政府に提案している。

日本からの支援は重要であり期待

国の発展のために日本からの支援は大変重要であり、期待している。一方、われわれは日本に石油を安定して供給する。日量10万バレルは、今年からでも開始することができるし、ベネズエラの膨大な石油の可採埋蔵量をもってすれば、これを日本が必要とする量に増大させることも可能である。両国で素晴らしい戦略的経済パートナーシップを築きたい。そうすることによって、ベネズエラは日本国民に大きく貢献することができるであろう。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
Copyright © Nippon Keidanren