日本経団連タイムス No.2949 (2009年4月30日)

スウェーデン・チャルマーズ工科大学のマルキデス学長と意見交換

−スウェーデンの科学技術政策など


日本経団連の産業技術委員会(榊原定征委員長、中鉢良治共同委員長)は20日、東京・大手町の経団連会館でスウェーデンのチャルマーズ工科大学学長のカリン・マルキデス博士との懇談を行った。
1829年に設立されたチャルマーズ工科大学は、私立大学ではあるが政府との支援契約も締結し、ヨーロッパのベンチャー創出の草分け的な存在として、産学連携にも熱心に取り組み、その成果を上げている。マルキデス学長からは、スウェーデンの科学技術・イノベーション政策とチャルマーズ工科大学の活動について説明を聴き、意見交換を行った。マルキデス学長の発言要旨は以下のとおり。

■ イノベーションと国際競争力でトップレベルのスウェーデン

スウェーデンは、研究開発投資額の対GDP比が世界第2位にあり、新製品による売上比率の高さ、人口当たりの科学文献発行数や特許取得数も世界のトップクラスに位置するなど、高いイノベーション創出力を有する。大企業の5割が既にグローバル企業であり、オープンイノベーションの重要性を理解し、積極的に取り組んでいる。国の研究開発予算の大半は大学に投じられるが、基盤的な経費についても競争原理が導入され、大学は5年ごとに激しい競争を経て資金を獲得する。競争的資金の配分決定では成果が重視され、大学は産業界とのコラボレーションを通じて自校の強みを伸ばしている。

■ 多数の企業とのコラボレーション実績を持つチャルマーズ工科大学

同大学のビジョンは持続可能な開発の体系的発展、国際的な視野を持った教育および研究の促進である。エンジニアリング、材料、木材ベースのナノ複合材料に関する産業界との共同研究を推進しているほか、オープン・イノベーション・センターを設置し、交通分野の安全性や海洋の危機管理等の分野において、大小問わず競合企業の協力による共同研究に取り組んでいる。そのほか、2つのサイエンスパークを有するほか、エネルギー分野でも多くのプロジェクトやセンターを有しており、同大学は、多様なコラボレーションの場を提供するクラスターとして機能している。さらに、次世代の起業家育成の試みとして、修士課程2年間で学生が起業するプログラムを実施しており、プログラム終了後も31社が存続するなどの成果を上げている。

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委員会ではまた、東京大学の浅尾修一郎博士から、チャルマーズ工科大学と共に推進する学際領域における国際プロジェクトであるAGS(「人間地球圏の存続を求める大学間国際学術協力」、ほかにスイス工科大学、マサチューセッツ工科大学が参画)についての概要説明も行われた。

【産業技術本部】
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