日本経団連タイムス No.2950 (2009年5月14日)

訪欧ミッション派遣

−G8ビジネス・サミットに参加/日・EUの経済関係等、欧州経済界と意見交換も


日本経団連は4月21日から29日にかけて、御手洗冨士夫会長を団長とするミッションを欧州に派遣、渡文明、前田晃伸、佃和夫、大橋洋治、岩沙弘道の各副会長ならびに横山進一、小林喜光両ヨーロッパ地域委員会共同委員長が参加した。イタリアのサルディニア島で開催されたG8ビジネス・サミットでは、共同宣言を取りまとめ、7月のG8サミットで議長を務めるイタリアのベルルスコーニ首相に手交した。ベルギーのブラッセル、スペインのマドリッドでは、欧州経済界首脳と懇談、先般取りまとめた提言「日・EU経済統合の実現を目指して」4月16日号既報)に基づき、日・EU経済関係について日本経団連の考え方を説明した。スペインでは、フアン・カルロス一世国王に謁見する機会を得た。

■ G8ビジネス・サミット


G8ビジネス・サミットで共同記者会見する各国経済界首脳

○ 金融・経済危機への対応

日本経団連として、(1)当面、各国は自国経済の建て直し、持続的な経済成長を実現するために全力を挙げる必要がある(2)中長期的に経済に活力を与えることができるのは民間企業をおいてほかにない(3)世界経済の持続的成長にとって自由な貿易投資の推進が極めて重要である――の3点を主張した。第2の点は共同宣言に盛り込まれ、世界経済の将来を切り拓くのは民間企業であるとの認識が改めて共有された。また、日本経済の現状と見通しについて、過去最大規模の経済対策が決定されたことを紹介するとともに、今年後半には景気が底を打つことが期待されることを説明した。複数の国から、経済の下降速度が緩んできたことから、今年第4四半期には底を打つのではないかとの見通しが示された。

○ 自由な貿易投資の推進

反保護主義で完全な意見の一致をみた。その上で日本経団連として、WTOドーハラウンドのできる限り早期の妥結が不可欠であり、交渉で積み重ねてきた成果を確実に刈り取ることが重要であると強調した。ドーハラウンドが妥結しない限り、実行関税率の引き上げなどのリスクが常にあり、自由と同時に安定的な事業環境の確保という点からもラウンドの妥結が必要であることも強く主張した。こうした議論を受け、共同宣言には、野心的でバランスのとれた合意は世界経済の回復にとって最も強力な刺激策になることが盛り込まれた。

○ 気候変動への対応

ポスト京都議定書の国際枠組について、日本経団連として、すべての主要排出国の参加、公平な国別削減目標の設定が重要であると指摘し、その関連でセクター別積み上げ方式の採用、基準年の見直しを主張した。2050年に世界全体の温室効果ガスを半減させるためには、革新的な技術の開発が不可欠であるとも主張した。その関連で排出量取引の問題点も指摘した。排出量取引については、温室効果ガス削減の一つの方策として否定すべきものではないが、すべての主要国が参加するなどの条件が整わないと効果は限られたものになる点などが共同宣言に盛り込まれた。

■ 欧州経済界との対話

ブラッセルでは、欧州34カ国の経済団体から構成されるビジネス・ヨーロッパと、(1)日、EUの経済情勢(2)今後の日・EU経済関係の優先課題(3)ポスト京都議定書の国際枠組――をめぐって懇談した。特に(2)については、日本経団連側として、「日・EU間にこそ、開かれた自由な貿易投資環境をぜひ実現したい。現状では、お互いの利害、関心事項は必ずしも一致していないかもしれないが、経済統合のプロセスを進める中で、それらを一体的に解決することでWin―Winの関係構築をめざしたい」との考え方を強調した。ビジネス・ヨーロッパ側からは「日本経団連の提言は、われわれの考え方に近い」との発言がみられた一方、日・EU間で関税問題を取り上げることについて、慎重な意見が出された。

マドリッドでは、スペイン経団連と、(1)両国の経済情勢(2)日・EUの枠組における日・スペイン経済関係――をめぐって懇談した。スペイン側からは、日本からの直接投資および日本企業との産業協力を期待する発言があった。日本経団連側からは、スペインにおける労働市場の柔軟性向上を求める一方、署名済みの社会保障協定が両国間の人的・投資交流の推進に資することが期待されると指摘した。また、滞在労働許可手続きについて、日・EU経済統合に向けた規制面の協力の一環として、ビジネス・パーソンの移動の円滑化という観点から抜本的な解決をめざすよう提案した。さらに、日・EU間における、より開かれた貿易投資環境の実現に向け、2010年前半にEU議長国を務めるスペインに対しリーダーシップの発揮を要請した。

【国際経済本部】
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