日本経団連タイムス No.2950 (2009年5月14日)

「観光立国に関する官民協議会」発足

−観光産業の競争力強化へ対話開始/日本経団連が設置を提案


内閣官房、観光庁が中心となり、経済産業省、外務省など観光政策に関係する9省庁と日本経団連、日本商工会議所、日本ツーリズム産業団体連合会、日本政府観光局から構成される「観光立国に関する官民協議会」の第1回会合が4月21日、内閣府で開催された。これは昨年10月1日の観光庁発足の機会をとらえ、日本経団連が、政府内の総合調整と官民の政策対話の強化を目的とした官民協議会の設置を提案したことに基づき発足したものである。

当日は政府から福田進内閣官房副長官補、本保芳明観光庁長官はじめ各省庁の局長クラスと間宮忠敏日本政府観光局理事長が、民間からは日本経団連の佃和夫副会長(観光委員会担当)、大塚陸毅観光委員長、生江隆之観光委員会企画部会長をはじめ、日本商工会議所の須田寛観光小委員長、日本ツーリズム産業団体連合会の舩山龍二会長が出席した。会議の冒頭、福田内閣官房副長官補は、政府と経済界が一体となって観光立国実現に取り組むことの重要性に触れ、同協議会が双方による対話の場となることへの期待を表明した。また、各省庁に対しては、同協議会を契機として、これまで以上に観光振興を自らの課題として取り組んでもらいたいと呼びかけた。

これに対して佃副会長が、民間を代表してあいさつし、日本経団連が観光振興に取り組む理由として、観光には、日本の国際的地位の向上や海外との相互理解促進による文化安全保障等の意義があることを挙げた。さらに、広域的な観光協力は、地域経済を活性化させ、内需振興による景気回復にもつながるほか道州制導入の契機ともなり得るので、官民双方が知恵を出し合って、観光産業を名実ともに21世紀のリーディング産業としていくことが肝要との考え方を示した。

現在、政府では観光立国推進基本計画に基づき、2010年までに訪日外国人旅行客数を1000万人に増加させるなどの施策を展開している。こうした施策の進捗状況に関する説明を受け、大塚委員長からは、世界同時不況の中で観光振興を図るには、関係省庁が進めている総額2000億円に上る関連施策の実効性を制度の利用者たる企業等の視点から改めて点検し、制度の重複や非効率を是正していく必要があり、この協議会をそうした場として活用すべく、今後、具体的な問題点を提示していくとの発言があった。大塚委員長はさらに、観光はすそ野が広い産業であり、あらゆる産業がプレイヤーになり得ることから、観光分野に対する認知度を高めていく必要があると指摘。そのための具体的な取り組みとして、北東アジアの産業協力の緊密化に果たす観光分野の役割を取り上げ、日本経団連の観光委員会が韓国経済界との間で行っている日韓観光協力会議の成果に加え、御手洗日本経団連会長をはじめ日韓両国の経済界首脳が参加するビジネスサミット・ラウンドテーブルや李明博大統領との懇談の場でも、両国企業による観光分野での協力が両国経済関係の緊密化につながっていることを繰り返し強調しているなどの活動を紹介した。

最後に、佃副会長が、「観光分野は、関連産業が多いことから、グランドデザインを描いてひとつの方向に向かって動くことが難しい。この会議での議論がその道筋を示し体系的な動きがなされることへの一助となることを期待したい。また、グローバル展開する製造業の経験も活かしてもらえるよう努めたい」と述べた。

同協議会では、今後、実務者による検討を進め、今年下半期に開催が見込まれる次回会合にその結果を報告することになっている。これに向けて日本経団連の観光委員会では、生江企画部会長が中心となって具体的な論点の洗い出しに取り組む予定である。

【産業政策本部】
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