日本経団連タイムス No.2951 (2009年5月21日)

新IT戦略策定へ

−内閣参事官と意見交換/情報通信委員会


日本経団連の情報通信委員会(石原邦夫共同委員長、渡辺捷昭共同委員長)は7日、都内のホテルで会合を開催し、内閣官房の南俊行内閣参事官と小宮義則内閣参事官から、IT戦略本部における中長期的な戦略の検討状況について説明を聴くとともに、意見交換した。また、情報化部会IT新改革戦略推進ワーキング・グループが取りまとめた提言案「新IT戦略の策定に向けて」の審議を行った。内閣参事官の説明概要は、以下のとおり。

■ 6月末に向け新たな中長期戦略を策定

IT戦略本部は、2015年を目途とした新たな中長期戦略を、今年6月末までに策定するための検討を進めている。これに先立ち、3月末に「三カ年緊急プラン」を取りまとめた。

新たな中長期戦略では、「三カ年緊急プラン」と同じく、「電子政府・電子自治体」「医療」「教育・人財」が三大重点分野、「産業・地域の活性化および新産業の育成」と「デジタル基盤の整備」が二つの柱になる予定である。

■ 国民電子私書箱構想

現在、政府のほとんどの手続きがオンライン申請可能であるにもかかわらず、オンライン利用率はようやく30%になったところである。その理由として、他の行政機関が発行した添付書類がオンラインで利用できないという問題がある。60年前から国民番号が定着し、あらゆる行政機関が一つの番号を利用しているスウェーデンですら、同様に行政機関の横の連携に問題があるといわれている。

そこで、IT戦略本部が提案しているのが、国民電子私書箱である。希望する国民や企業だけにIDを付与し、それぞれのデータを紐付ける仕組みとして国民電子私書箱を利用する。銀行口座で自分の資産を自ら管理するように、国民電子私書箱で自分の行政情報を自ら管理できる。企業も、従業員の税や雇用関係のデータを紙に落とし込み、自治体ごとに振り分ける作業などが省略できる。電子行政は、国が旗を振るだけでは自治体がついて来ないため、中央省庁だけでなく日本全体を統括するようなCIOが必要である。

■ IDの導入に向けて

続く意見交換では、住基カードとは別に社会保障カードの導入が検討されていることに触れ、「システムの重複を避けるため、IDを統一すべきである」との意見が委員から出された。それに対し、南参事官から「行政サービスのワンストップの仕組みは同じなので、一本化すべきということで共通の認識を得つつある。ただし、あらゆる行政機関が使う番号を一本化するには、膨大なシステム改修コストがかかる。番号自体を一本化するのか、国民電子私書箱構想のように新しい識別番号を付与し別々のシステムの情報を共通化していくのか、よく検討する必要がある」とのコメントがあった。

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また、当日は、提言案「新IT戦略の策定に向けて」を審議し、委員会として承認した。同提言案は、11日の会長・副会長会議における審議を経て公表された(提言は次号掲載予定)。

【産業技術本部】
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