日本経団連タイムス No.2953 (2009年6月4日)

日本の活力は民間企業の双肩に

−総会へ麻生首相がビデオメッセージ


現在日本は、深刻な課題に直面している。100年に一度の経済危機、北朝鮮の核やミサイル問題、新型インフルエンザ、地球環境問題などである。私は、総理就任後、世界の先進国の中で日本が最初に不況から脱出するという強い決意で全力投球し、半年余りで矢継ぎ早に対策を講じ続けてきた。これまで、「3段ロケット」の経済対策を講じてきた。雇用対策、資金繰り対策などがその例だ。その成果は着実に出てきていると思う。ようやく鉱工業生産指数、消費者態度指数、輸出などの面で、先行きに明るい兆しも出てきている。しかしながら日本経済は、不況脱出にはほど遠い状況にある。このため、「経済危機対策」を決定し、15兆円の財政出動という過去最大の大胆な対策を講じることとしている。これは規模が異例であるだけでなく、内容も未来への成長につながる画期的なものといえる。この経済対策と合わせて、2020年をめざした中長期の成長戦略を決定した。ここでは、低炭素革命、安心・元気な健康長寿、日本の魅力発揮を柱として、日本の戦略産業に官民の資源を集中的に投入することをめざしている。エコカーへの買い替え支援、省エネ家電に対するエコポイント付与といった政策も成長戦略の一環である。大企業、中堅企業への資金繰り対策にも対応を用意している。

いま国会審議は大詰めを迎えている。一日も早く、この予算を成立させ、実行に移したいと思っている(注=平成21年度補正予算は5月29日に成立)。

自民党と民主党と、どちらに政権担当能力があるか。抽象的な精神論だけでは、いまの国民的な危機は乗り切れない。100年に一度の経済危機、北朝鮮の核やミサイル問題、こうした国民が直面する現実的な危機に、具体的にどう対応するかが重要である。私は、歴史上、異例なまでの経済対策、北朝鮮に対する矢継ぎ早の具体的行動を現に講じている。政権担当能力の基本は、責任だと思っている。これは経営者の皆さんは、日々、痛切に実感しておられることだと思う。

財源を示さずにばら色の政策を提案するのは簡単だ。しかし私は将来増大する社会保障費に対応するため、景気が回復すれば、3年後に消費税を含めた税制の抜本改革をお願いすると明言している。その際、消費税はすべて医療費や年金で国民の皆様に還元する。

安全保障の問題も現実的な問題である。私は米国、韓国の首脳と電話会談を行い、北朝鮮に対する国際社会の一致した強い態度をめざして行動を起こしている。

地球環境問題についても同じである。温室効果ガスの削減は国民生活全般に大きな影響がある。国民や産業に対する負担の大きさを示すことなく、削減量が多ければ多いほどよいという精神論は無責任である。私は削減量だけでなく、負担の大きさも率直に国民に示し、その上で徹底して国民の声を聞く努力を重ねている。国民の意見を踏まえて、単なる宣言ではなく、裏打ちのある削減目標を近々決断しようと思っている。

何といっても日本の活力は、民間企業の双肩にかかっている。景気の回復はもちろん、雇用の確保、地球環境対策、いずれも政府だけではできることに限りがある。悲観するのではなく、ぜひ日本の底力と将来を信じて、元気を出していただきたい。責任ある政権与党としてこの国民的な難局への対応に全身全霊を捧げたいと考えている。よろしくお願い申し上げる。

(文責記者)
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