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15兆円規模の追加経済対策の策定、東アジアサミットの開催に際し、日本経団連からの協力を得たことに感謝している。
わが国の経済情勢は、一部に明るい兆候が見られるものの、依然として厳しい状況にある。政府として、中小企業のみならず中堅・大企業も含めた企業の資金繰り対策をはじめ、75兆円に上る前例のない規模での累次の経済対策を実施してきた。4月には産業活力再生法を改正し、日本政策投資銀行が企業への出資を円滑に行えるよう制度改正を行った。
しかし、経済活動の担い手はあくまで民間企業の経営者であるので、リーダーの方々には一層の奮起を期待している。
先月、私たちは新たに「未来開拓戦略」を取りまとめた。企業の中長期的な経営戦略においては雇用が重要である。企業にとってもっとも重要な経営資産であり、わが国が世界に誇るべきはやはり人材である。政府が経済対策を行う以上、長期的な経営判断の中で雇用維持への取り組みを強く期待したい。
また、わが国にとっては、今後中間層が拡大するアジアを中心とした新興国とともに成長していくことが重要である。この点で、昨年6月には日本としてリーダーシップを発揮し、アジア16カ国の協力により東アジア・アセアン経済研究センターを設立した。日本代表の理事には日本経団連の奥田碩名誉会長に就任いただいている。
経済が低迷すると、ややもすると、保護主義の動きが出てくる。私は先の連休中に訪米し、カーク通商代表らと保護主義の阻止、ドーハラウンドの推進に合意した。中国のITセキュリティ製品への強制認証制度に対しても、日米が共同行動を取ることとしている。
日本は来年15年ぶりに、また米国は再来年にAPECの議長国となる。産業界の協力を得つつ、日米が連携して自由貿易の健全な発展に向け、世界の議論をリードしていきたい。
今後、景気が回復すれば、エネルギー問題が必ず俎上に上るため、先手を打って取り組んでいる。エネルギー・資源に乏しいわが国は、独自の資源外交を展開する必要がある。エネルギー分野に限らず、資源国の関心に応じて、観光、文化、教育など幅広い協力関係を構築しなければならず、日本経団連の理解と協力をお願いしたい。
地球温暖化への対応も重要である。経団連の考えについては、承知しているつもりである。COP15で合意をめざす次期枠組みは、すべての主要国が参加し、公平で実効あるものでなければならない。わが国の中期目標は6月に総理が最終決断することになっているが、単なる宣言ではなく、わが国として実行可能で、地球全体の温暖化対策に貢献するものとなるよう政府部内でもしっかりと議論を重ねていく。