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厚生労働省の中央最低賃金審議会(会長=今野浩一郎・学習院大学教授)は7月29日、2009年度地域別最低賃金額改定の目安の答申を行った。 公益委員見解として示された今年度の目安は、生活保護との乖離額のない35県については現行水準の維持を基本として引き上げ額の目安は示さない(目安額は0円の意味)とした。一方、乖離が生じている12都道府県については、地域の経済や企業、雇用動向等を踏まえ、地方最低賃金審議会が自主性を発揮して具体的な乖離解消期間を定めることを期待するとした上で、3つのグループに分けて対応を示した。
具体的には、(1)今年度中に乖離解消予定であった6府県(宮城県、埼玉県、京都府、大阪府、兵庫県、広島県)については原則1年延長(2)北海道、東京都、神奈川県については原則、解消予定年数は変えないが今年度の解消額は昨年決めた解消予定年数に1をプラスした年数で除した額(3)昨年度の最低賃金の引き上げで乖離を解消したものの今年度新たに乖離額が生じた3県(青森県、秋田県、千葉県)は原則として2年以内に解消(ただし青森県は3年)とする――などといった内容。厚生労働省は、同見解に基づいて一定の前提の下で試算した場合、最低賃金額は全国加重平均で7~9円引き上がり、710~712円になると試算している。
今年度の目安審議にあたって日本経団連は、地方経営者協会の最低賃金担当者らを集めて意見を聴いたほか、人事・労務委員会(指田禎一共同委員長、市野紀生共同委員長)で対応を協議した上で、使用者側委員を通じて見解を表明。具体的には、昨年秋からの世界同時不況による急激な景気の落ち込みや、生活保護の基準年度の変更による乖離解消額の大幅増加などの想定外の2つの要因が発生したことを十分に考慮した目安とすべきであることを強調。その上で、(1)30人未満の事業所を対象とした賃金改定状況調査結果が過去最低のマイナス0.2%であったことからマイナス目安とすべき②生活保護との乖離解消は凍結を含めて検討すべき――と主張した。
それに対して労働者側委員は、賃金底上げの歩みを止めることなく、最低賃金水準の着実な改善が肝要であるとし、(1)目安は有額(プラス)とすべき(2)生活保護との解消は昨年の内容に基づいて速やかに行うべき――と主張、労使の意見の一致には至らなかった。
そこで、昨年度と同様、公益委員から今年度の地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解が示され、同見解を地方最低賃金審議会に提示することとした。
今後は、中央最低賃金審議会から示された目安答申を踏まえ、各都道府県の地方最低賃金審議会において公労使が審議し、今月中にはほとんどの地方最低賃金審議会で答申がなされる見込み。