日本経団連タイムス No.2963 (2009年8月13日)

地球温暖化国際交渉のあり方など

−21世紀政策研究所の澤研究主幹と懇談/環境安全委員会


地球温暖化問題をめぐって、年末のCOP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議)に向けた国際交渉が本格化している。経済界としては、国際交渉で確保すべき事項を明確化した上で、日本政府に働きかけを行っていくことが重要である。
こうした中、21世紀政策研究所の澤昭裕研究主幹が、ポスト京都議定書の交渉において、わが国が譲れない条件や途上国支援のあり方についての考え方をまとめ、「地球温暖化国際交渉に関する政策提言」を公表した(末尾URL参照)。
そこで、環境安全委員会(坂根正弘委員長)では7月22日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、ポスト京都議定書のあり方などについて澤研究主幹と意見交換を行った。澤研究主幹の説明概要は次のとおり。

■ ポスト京都議定書の枠組をめぐる国際交渉

年末のCOP15までの間、国連では、京都議定書批准国がその改定を検討する「議定書AWG(アドホック・ワーキング・グループ)」と、すべての国が気候変動枠組条約の下で検討する「条約AWG」という二つの作業部会を中心に検討が行われる。
日本が期待を寄せるのは、米国や途上国の削減のあり方を議論する条約AWGの方であるが、わが国にとって最悪のシナリオは、COP15で議定書AWGの議論が先行し、米中を巻き込む合意ができないまま、「京都議定書の単純延長」という事態に陥ることである。

■ 国際交渉上の注意点

議定書AWGの結論のみをCOP15の成果とするようなことになれば、京都議定書の二の舞となり、日本だけが不利益を被ることは明白である。したがって経済界としては、日本政府が「京都議定書の改定のみが交渉成果となるようであれば、これには決して参加しない」旨表明するよう、強く申し入れるべきである。
また、国際交渉における「先進国対途上国」の対立構造が先鋭化する中、世界最高水準の省エネ技術を有する日本だけが、技術・資金の供給国にさせられてしまう枠組とならないよう、十分注意する必要がある。
これまでの日本政府の主張のポイントは、(1)セクター別アプローチ(2)すべての主要経済国の参加――であるが、とりわけ(2)については、次期議定書に「米中、特に米国が国内的に批准しなければ、枠組自体が発効しない」ことを何らかのかたちで盛り込んでいくことが極めて重要である。

■ 日本が追求すべき交渉のボトムライン

日本がポスト京都議定書の次期枠組に署名する際の5つの必要条件は、(1)排出削減目標が国際的に衡平であること(2)技術的に実現可能で、かつ負担が受容可能なものであること(3)米国が確実に批准すること(4)主要排出途上国の削減行動約束を得ること(5)途上国に対する支援措置が(4)と同時決着し、かつ自助努力を促進するものであること――である。
特に(4)と(5)については、中国やインドなどの主要途上国が目に見える削減行動を取ることを約束したとき初めて、日本として支援の約束を行うという同時決着が非常に重要なポイントになる。


地球温暖化国際交渉に関する政策提言−第1部=日本が追求すべき交渉のボトムライン
※URL=http://www.21ppi.org/pdf/thesis/090417.pdf
地球温暖化国際交渉に関する政策提言−第2部=途上国支援のあり方
※URL=http://www.21ppi.org/pdf/thesis/090615.pdf
【環境本部】
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