日本経団連タイムス No.2963 (2009年8月13日)

改正育児・介護休業法の内容について説明受ける

−厚労省局長から「子育て期間中の働き方の見直し」などで/労働法規委員会


日本経団連は7月30日、都内で労働法規委員会(三浦惺委員長)を開催した。

今回の会合では、厚生労働省雇用均等児童家庭局長の伊岐典子氏を招き、同氏から、7月1日に公布された、改正育児・介護休業法の内容についての説明を受けた。

伊岐氏は、冒頭、今回の育児・介護休業法の改正に至る背景として、急激な少子化の進展について説明した。この中で伊岐氏は、わが国は2005年に出生率が史上最低となる1.26を記録し、人口減少局面に突入しており、このままで推移すると、55年には、高齢者が総人口の4割を占め、経済の支え手である生産年齢人口(15〜64歳)は現在の半分になると述べた。その上で、少子化の進行が、わが国の経済成長の大きな制約とならぬよう、政府では07年に「子どもと家族を応援する日本」重点戦略を定め、少子化対策を進めていることを紹介した。

さらに、伊岐氏は、国民が抱く結婚への希望や理想とする子どもの数に関して、現実と大きな隔たりがあり、この乖離を埋めていくためには、安定的な雇用の実現と出産後の女性の就労継続が重要であると述べた。特に女性の就労継続について、第一子出産後、約7割が退職しており、この数値はおよそ20年間変わっていないことを問題視し、退職した女性のうち、24.2%は「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立が難しかった」と回答していることを紹介。出産後の子育て期間中の働き方に関する制度の充実や、父親の子育てへの参加を促すことにより、女性が働き続けられるためのサポート体制を整えていくべきであるとした。

また、介護休業に関しては、親族の介護のために、離転職をしなければならない状況が発生していることも紹介した。

このような状況を受けて、今回の育児・介護休業法の改正では、(1)子育て期間中の働き方の見直し(2)父親も子育てができる働き方の実現(3)仕事と介護の両立支援(4)育児休業の取得に関する不利益が生じないようにするための実効性の確保――の4つの柱を据えたことを紹介し、具体的な内容を説明した。

(1)子育て期間中の働き方の見直し

3歳までの子を養育する労働者に対して、事業主は短時間勤務制度を設けなければならない。また、労働者の請求により所定外労働を免除しなければならない。子の看護休暇を充実し、小学校就学前の子どもが2人以上いる場合は年10日まで取得を可能とする。

(2)父親も子育てができる働き方の実現

父母ともに育児休業を取得する場合の休業可能期間を1歳2か月まで延長する(パパママ育休プラス)。出産後8週間以内に父親が育児休業を取得した場合、特例として、育児休業の再度の取得を認める。労使協定により、専業主婦の夫などを育児休業の対象から除外できるという法律の規定を廃止。

(3)仕事と介護の両立支援

要介護状態にある家族の通院の付き添い等に対応するため、年5日、対象者が2人以上であれば年10日の介護休暇を取得可能とする。

(4)実効性の確保

育児休業の取得等に伴う不利益取り扱いを防止するために、都道府県労働局長による紛争解決の援助や調停委員による調停制度を創設。勧告に従わない場合の公表制度や報告を求めた際に虚偽の報告をした者等に対する過料の創設。

3段階で施行

施行は3段階で実施。紛争解決援助制度や公表制度、過料について、9月末までに施行。次いで、調停制度を11年4月1日に施行。それ以外は11年の6月末日までに施行。なお、従業員100人以下企業は、短時間勤務制度や所定外労働の免除の義務化、介護休暇制度の創設についてのみ公布の日から3年以内に施行。

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伊岐氏の説明の後、年末にかけて労働政策審議会で行われる省令・指針の改正に関する審議について議論し、労働法規委員会、労務管理問題検討部会で検討、対応していくことを確認した。

【労働法制本部】
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