日本経団連タイムス No.2964 (2009年8月27日)

「サービス産業としてみた日本の医療」

−開原・国際医療福祉大学副学長から聴く/経済政策委員会企画部会


日本経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)は3日、国際医療福祉大学の開原成允副学長から、「サービス産業としてみた日本の医療」について説明を聴いた。

問題点など指摘

開原副学長はまず、外国人患者の受け入れを国策として掲げているタイのバンコック国際病院について、医療水準も高く、周辺サービスも充実していることを説明。同様に、シンガポールや韓国などのアジア諸国でも医療の国際化が進んでいるが、こうした国々では、国内に医療格差はあるものの、医療が重要な産業として位置付けられていると述べた。

一方、日本では、医療が産業として考えられていないため、外国人患者を受け入れるインセンティブが働かず、国外へ日本の病院の情報発信もなく、また国際的な病院の認証機構であるJCI(Joint Commission International)の認証を受けた病院がない(8月3日時点)ことなどを指摘。マクロ的な視点では、医療は公共事業よりも生産や雇用を誘発する巨大な産業との分析があるが、日本の個々の医療機関は、自由な資金調達や価格設定などが規制されており、産業として必要な要件が満たされていないと述べた。また、こうした規制の背景として、医療費が公費負担とリンクしているため医療費を抑制せざるを得ないと説明した。

その上で、昨年、政府の社会保障国民会議は公費負担の増加を覚悟した上で医療費を増加させる将来像を描いているが、これは政策的に実現していないし、公費負担があれば規制は免れないと指摘。医療の産業化を進めるためには、医療提供を「公的な負担による基本的な医療」と「自由な市場を保証する付加サービス的な医療」の2階建てとすべきであると指摘した。特に、病院の国際化を通じて、医療の中に規制のない部分、すなわち産業とみなせる部分をつくっていく必要があると述べた。

最後に、今後は科学的データに基づき、医療の受益者である国民も参加して議論する場をつくる必要があるとの考え方を示した。

【経済政策本部】
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