日本経団連タイムス No.2964 (2009年8月27日)

「知的財産推進計画2009」に関する懇談会開催

−「2009」のポイントなど説明を聴き意見交換


日本経団連は7月27日、東京・大手町の経団連会館で「知的財産推進計画2009」(以下、「2009」)に関する懇談会(野間口有知的財産委員長、足立直樹同共同委員長)を開催した。
懇談会では、内閣官房知的財産戦略推進事務局の近藤賢二事務局長と内山俊一事務局次長から、今年6月に知的財産戦略本部でまとめられた「2009」の説明を受けるとともに、意見交換を行った。
まず、近藤事務局長が、近年、知財の活用、プロイノベーションという観点が重要となっていると指摘し、「2009」では、イノベーション促進のための知財戦略の強化、グローバルな知財戦略の強化、ソフトパワー産業の成長戦略の推進という点に重点を置いていることを説明した。
次に、内山次長が「2009」のポイントについて説明した。「2009」の概要は次のとおり。

■ 知的財産推進計画2009(概要)

  1. 1.イノベーション促進のための知財戦略の強化
    (1)技術革新や市場動向に対応した知財制度を構築する
    (2)オープン・イノベーションの進展に対応した環境を整備する

  2. 2.グローバルな知財戦略の強化
    (1)世界知財システムの構築等に向けた取り組みを強化する
    (2)海外での模倣品・海賊版による被害を低減するための取り組みを強化する

  3. 3.ソフトパワー産業の成長戦略を推進
    (1)ソフトパワー産業の振興を図る
    (2)デジタル・ネット時代に対応した知財制度等を整備する

  4. 4.知的財産権の安定性・予見性の確保
    (1)特許侵害訴訟における無効判断の原因分析を行う
    (2)特許の有効性判断に係る紛争処理スキームを見直す

  5. 5.利用者ニーズに対応した知財システムの構築
    (1)特許庁の審査基準を明確化する
    (2)出願人ニーズに応じた審査処理スキームを構築する

◇◇◇

その後内山次長は、2009年度の主要課題として、(1)大学発のイノベーションを促進する知的財産システムの見直し(2)海外展開を視野に入れたコンテンツ創造の活性化(3)ネット上の違法コンテンツ対策の強化――という3つの課題を挙げた。
続いて近藤事務局長が、今年度から政策評価マネジメントの取り組みを導入したとの紹介を行い、「知的財産推進計画2008」の実施状況の調査結果を踏まえて「2009」の実施を図るという「PDCAサイクル」をしっかり回していくとの決意を示した。

■ 意見交換

意見交換では、日本経団連から、(1)デジタル・ネット時代に対応した著作権法制のあり方についてさらに議論すべき(2)海外への情報発信機能を強化すべき(3)独法化後の国立大学法人の海外企業への安易な特許の譲渡に対策を講ずべき――などの意見が出された。これに対して知的財産戦略推進事務局からは、(1)日本経団連の主張している「複線型著作権法制」等も含め、多角的観点から著作権法制のあり方を今後検討する(2)ブランドやコンテンツの海外への発信・展開に努める(3)2009年度の知的財産専門調査会で大学の知財を取り上げて検討する――などの回答があった。

◇◇◇

今後、日本経団連では、「2009」に盛り込まれた諸施策について、知的財産委員会および産業問題委員会が、各々の担当分野のフォローアップを行い、わが国産業界にとって望ましい知的財産戦略について検討を深めていく考えである。

【産業技術本部】
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