日本経団連タイムス No.2965 (2009年9月3日)

農水省から農政の課題で説明聴く

−食料・農業・農村基本計画の見直しや改正農地法と企業の農業参入など/農政問題委員会


日本経団連(御手洗冨士夫会長)の農政問題委員会(小林栄三共同委員長、廣瀬博共同委員長)は8月4日、東京・大手町の経団連会館で、農林水産省幹部から食料・農業・農村基本計画の見直しや、改正農地法と企業の農業参入などについて説明を聴き、意見交換を行った。

■ 食料・農業・農村における課題

冒頭、井出道雄事務次官があいさつし、「現在、わが国は食料、農業、農村の3つのカテゴリーにおいてそれぞれ課題を抱えている」と指摘。食料については、国民に対する安定供給を確保するため国内生産・輸入・備蓄を適切に組み合わせる必要があるが、昨年前半の穀物価格の高騰など国際的な食料需給環境が不安定な中で、自給率のベースとなる自給力(農地、水、人など)の確保と輸入の多角化が課題であると述べた。
また、農業については、担い手の高齢化や経営不安定化の下で、農地法改正等により企業の参入促進や農業生産法人による若年層の雇用促進を進めているが、担い手問題にはさらなる検討が必要と説明。さらに、農村については、食料・農業の厳しい状況もあり集落としての機能維持が懸念される地域も増えていると指摘した上で、地域資源を活かしたイノベーション(バイオ、知財、ITの活用等)を通じた農村の活性化の重要性を強調した。
他方で、これら食料・農業・農村の課題はやりがいと可能性のある分野であり、経済界の理解を得ながら議論を深めていきたいとの期待を示した。

■ 食料・農業・農村基本計画の見直しと改正農地法

続いて、末松広行・大臣官房政策課長が、来年3月頃の改定を予定している食料・農業・農村基本計画の検討スケジュールや、世界の食料需給の動向、わが国における農業所得の低下や高齢化の進行などの現状とともに、地産地消や農商工連携の推進などこれらの課題解決に向けた施策等について説明した。
また、坂井眞樹・政策評価審議官が、今年6月に成立した農地法改正の目的として、国内の食料供給力強化のための基礎的な生産基盤である農地の確保と有効利用の促進を指摘。その上で、多様な主体の農業参入を促進するための方策の一つとして、(1)企業による農地の貸借等の権利取得規制の緩和(2)農業生産法人への出資制限の緩和による企業と農業経営体との連携の容易化――などの措置を講じたとした。これらの説明の後、委員との意見交換が行われた。

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農政問題委員会では、今年3月に取りまとめた「わが国の総合的な食料供給力強化に向けた提言」での指摘に沿って、わが国の安定的な食料供給体制の構築に向け、政府の食料・農業・農村基本計画の見直しの検討に合わせ、日本経団連としての考えを改めて整理する。併せて、米の生産調整について関係者の意見を聞きつつ、そのあり方を検討していく予定である。

【産業政策本部】
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