日本経団連タイムス No.2965 (2009年9月3日)

産学官連携に関する状況や文科省関連施策の説明聴く

−大学等での民間企業との共同研究・受託研究など/産業技術委員会産学官連携推進部会


日本経団連の産業技術委員会産学官連携推進部会(西山徹部会長)は8月6日、東京・大手町の経団連会館で、文部科学省研究振興局の柳孝研究環境・産業連携課長から「文科省における産学官連携推進に関する施策」の説明を聴いた。
文科省は、産学官連携を(1)イノベーション創出と競争力強化(2)大学等の研究成果の社会還元(3)科学技術の新領域や融合領域への展開(4)効果的・効率的な研究開発システム構築(5)社会が必要とする人材育成等を達成するための重要な手段――と位置付けて、さまざまな施策を展開している。また研究成果の社会還元を促進する観点から、大学等における民間企業との共同研究・受託研究等、産学連携の実施状況について毎年調査を実施しており、その結果概要についても説明があった。
説明の概要は次のとおり。

■ 産学官連携を推進する背景

わが国の国際競争力が低下する一方で、米国・欧州・中国等のイノベーション促進に向けた取り組みは活発であり、国際的な「知の大競争時代」に突入した。日本でも科学技術基本法に基づく科学技術基本計画が策定、実行されており、大学への期待も非常に高い。2006年12月の教育基本法改正では、大学の役割として「教育」「研究」に加え、「成果の社会提供」が規定されており、大学の自主判断で特色・個性を発揮することにより、各大学の機能分化を期待している。

■ 産学官連携に関する調査結果

03年度から08年度の変化として、共同研究件数は約2倍、特許出願件数は約4倍、特許実施件数は約29倍、企業から大学への研究資金は約1.8倍、大学発ベンチャー設立累計数は956社から1775社へと増加、承認TLO(Technology Licensing Organization、技術移転機関)数は33機関から47機関へと増加するなど、いずれも進展を見せている。
しかし、民間企業からの受託研究の金額の減少、共同研究1件当たりの規模が250万円程度で横ばいといった点は課題。米国の大学における特許実施料は、1大学で50億円を超えるところがめずらしくないが、日本では全大学合計でも10億円程度と、大きな差がある。
また、日本企業の研究開発費の支出先として海外の研究機関への支出が伸びている一方、海外企業から日本の大学に対する共同研究の実績は、共同研究全体の1%弱。国内企業は、国内大学の能力を低く評価しているわけではなく、また契約の柔軟性、知財に関する交渉の容易性はむしろ日本の方が高いが、海外の大学の事業化に対する意識を非常に高く評価している。

■ 来年度に向けた取り組み

産業界からの提案に基づいて、大学が基礎研究を行う「産学並走型基礎・基盤研究開発事業」や、科学技術情報の自由な利用、基礎研究目的の特許無償利用のルールを設定した上での特許の自由な利用を可能とする「科学技術コモンズ」の構築等を検討中。

◇◇◇

説明後の質疑応答では、国内・海外の大学の、企業との共同研究に対する取り組み姿勢の違いに対する企業側からの具体例の提示や、外国籍の教員や留学生を増やす提案など、日本の大学そのものの国際化について、活発な意見が出された。

【産業技術本部】
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