日本経団連タイムス No.2966 (2009年9月10日)

観光による地域活性化を現地調査

−香川県直島町へ調査団を派遣/観光委員会


日本経団連観光委員会(大塚陸毅委員長)は、観光振興を通じた地域活性化策を検討している。その一環として8月25、26の両日、現代アートによる街づくりで年間34万人の観光客が訪れ、日本有数の観光地となった香川県直島町に、同委員会企画部会の主要メンバー11名からなる現地調査団(団長=生江隆之部会長)を派遣した。現地では、各種の施設やプロジェクトを精力的に視察するとともに、事業を企画運営してきた福武總一郎ベネッセコーポレーション会長や濱田孝夫直島町長と懇談し、直島町の実例に学んだ。
懇談の中で、濱田町長は調査団に対して次のように述べ、今後の町の発展に自信を示した。


濱田直島町長と懇談する調査団一行

■ 濱田直島町長

直島町は大小27の島々からなり、古くから瀬戸内海の海上交通の要所として栄えてきた。大正時代には、現在の三菱マテリアルの精錬所が建設され、産業廃棄物処理施設も受け入れた経緯があることから、町としていち早く環境問題に取り組み、エコタウン事業を推進してきた。そのため、現在では、「環境の島」とも呼ばれている。

これに加え、「ベネッセアートサイト直島」が直島町を世界的に有名な町とし、国内外から多くの観光客が訪れるようになっている。同サイトには、安藤忠雄氏の設計による現代アートを中心としたミュージアム、瀬戸内海国立公園の風光明媚な風景を望むホテル、古い家屋を現代アートと一体化させ保存した施設などがある。これらの建築物等が一体となって大きな話題となり、海外からも注目されている。これは、福武書店(現ベネッセコーポレーション)の「文化的かつ健康的なリゾート地をつくる」という思想に基づく積極的な支援や官民一体となった観光振興策の賜物である。

この成功により、町は社会的にも大きな恩恵を受けている。例えば、町のお年寄りたちは、多くの若い旅行者と言葉を交わす機会が増えたことで、生きがい・やる気を持ち始めている。

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一定の産業経済基盤が確立された地域の事例ではあるが、今回の調査において、顧客の視点に立った観光資源の創出や地元住民との信頼関係の構築が、直島町の現在の地位を築いたという点が明らかになった。今後、観光委員会企画部会では、直島町での調査結果を踏まえつつ、企業と自治体、地元産業界等との連携に注目しながら、「観光振興を通じた地域活性化」について、さらに検討を深めていくこととしている。

【産業政策本部】
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