日本経団連タイムス No.2968 (2009年10月1日)

ワーク・ライフ・バランスに関わる課題について意見交換

−多様な人材を受け入れ活かす組織づくりに向け/少子化対策委員会


日本経団連(御手洗冨士夫会長)の少子化対策委員会(斎藤勝利共同委員長、前田新造共同委員長)は9月9日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、神戸大学大学院経営学研究科の高橋潔教授から、多様な人材を受け入れ活かす組織づくりに向け、ワーク・ライフ・バランスに関わる課題について説明を聴いた後、意見交換を行った。

■ 高橋教授の説明概要

ワーク・ライフ・バランスの議論は、育児・介護休業制度、短時間勤務制度、フレックスタイム制度等、すべて制度論にとどまりがちである。確かに制度がなければ施策は実施できない。しかし、制度を導入すればワーク・ライフ・バランスは促進されるのか、それだけでよいのかという疑問がある。ワーク・ライフ・バランス施策のメリットとして、従業員のモチベーション向上や生産性向上につながること、採用にあたり優秀な人材の確保や定着を促進すること、仕事の効率性が高まることなどが挙げられる。しかし、その効果測定は難しく、今後の研究が進むことを期待している。

ワーク・ライフ・バランス施策の推進には、心理学的観点に立つと、次のような阻害要因が考えられる。(1)経済的要因(ワーク・ライフ・バランスを実践する経済的余裕がない)(2)社会的要因(安定的な収入を失うのではないかとの不安など)(3)家族的要因(夫婦間・親子間のコミュニケーション不全)(4)心理的要因(社内で周囲と異なることへの気後れ)――などである。これらの要因は複雑に絡みあっており、個人生活や価値観に関わるものであり、その克服には中長期的な視点が必要である。

ワーク・ライフ・バランスを推進するためには、職場においては、共感や信頼を高め情緒的に支えること、うまく困難に対処できるよう有益な情報を与えること、仕事ぶりを認めるなど、上司や職場仲間から当事者に対してさまざまなソーシャルサポートが提供されることが求められる。また、職場のリーダーには、多様な価値観に対する理解をもつこと、周囲と異なるスタイルを選択する勇気をもたせることが望まれる。

■ 意見交換

引き続き行われた意見交換の中では、「ワーク・ライフ・バランスの阻害要因として、家族関係など個別的な要素があることは理解した。その上で男性の働き方の見直しに向けて改めて示唆があれば教えてほしい」との質問に対し、「家族関係や考え方を突然に変えるのは難しい。例えば、職場の情報を家族が共有できるよう、家族が参加できるサイトを立ち上げることも一案ではないか」との見解が示された。また、「昨今、若手社員のメンタルヘルスケアやモチベーションアップを課題と感じており、職場内のコミュニケーションが重要となるが、どのような点に留意すべきか」との質問に対し、「上司が上からの目線で一方的にコミュニケーションを取ろうとしても本音は出てこない。若手と年齢層の近いサブリーダーがさまざまにサポートできる体制も必要である」との回答があった。

【経済政策本部】
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