日本経団連タイムス No.2971 (2009年10月22日)

証券監視委の取り組みと課徴金事例を聞く

−金融制度委員会資本市場部会


日本経団連は5日、金融制度委員会資本市場部会(武井優部会長)を開催し、証券取引等監視委員会事務局の後藤健二課徴金・開示検査課長から、証券監視委の最近の取り組みと課徴金事例について説明を受けた。概要は以下のとおり。

■ 金融システムの中の証券市場-皆で守るシステムとしての機能

証券市場は多様な参加者の協働作業で成り立っており、とりわけ主役である投資者と発行者の双方がルールを守ることで、初めてシステムとして十分に機能するようになる。具体的には、発行者は情報開示に関するルール、投資者は公正取引に関するルールなどを順守する必要がある。

■ 適正な価格形成と情報の重要性

(1)適正な情報開示

株価は情報によって決定されることから、適正な価格形成を実現するためには、適正な情報開示が不可欠である。情報開示には、金融商品取引法で定められた制度開示(有価証券届出書、有価証券報告書、大量保有報告書、公開買付届出書等)と取引所業務規程等で定められた適時開示(投資者の投資判断に重要な影響を与える情報)がある。証券監視委は、公益または投資者保護のため必要かつ適当と認めるとき、発行者に対して有価証券報告書等に係る調査を行うが、他方で有価証券報告書等の提出件数は年間2万5千件を超えており、適正な情報開示は、まず発行者の自主的な行動によって確保される必要がある。

(2)不公正取引の防止

金商法の禁止する不公正取引は、不正行為一般(法第157条)、風説の流布、偽計等(法第158条)、相場操縦行為等(法第159条)、会社関係者のインサイダー取引(法第166条)、公開買付者等関係者のインサイダー取引(法第167条)である。これらに違反した場合には、課徴金や刑事罰の対象となる。
インサイダー取引については、各企業が重要事実となる情報を適切に管理し、早い時期に公表することが未然防止に役立つ。また、tipping (情報漏洩)の防止も視野に入れた社内ルールの制定などの取り組みが重要である。
今年5月には、日本証券業協会による内部者登録制度の実効性を高めるためのシステム(J-IRISS)の運用が開始されている。各企業においては、J-IRISS への登録について前向きに検討してほしい。

■ 最近の課徴金事例

最近の課徴金納付命令勧告の事例を概観すると、開示規制違反については、違反行為者の業種、上場している取引所、虚偽記載の態様は多種多様である。
また、インサイダー取引規制違反においては、違反行為者が監査役や公認会計士であるなど、高い職業倫理を求められる職業・役職の者による事例が散見される。不用意な tipping が情報受領者による多数の違反行為を招いた事例もある。

■ 証券監視委の機能と活動状況

証券監視委は、1992年に発足して以来、その役割が拡大してきたところであり、特に2005年以降は課徴金調査・開示検査の権限が付与されるなど、これまでにも増して適切な事務運営のための工夫が必要になっている。証券市場を十全に機能させるためにも、各企業(発行者)の自主的なルールの順守と証券監視委への積極的な情報提供をお願いしたい。

【経済基盤本部】
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