日本経団連タイムス No.2972 (2009年10月29日)

第8回企業倫理トップセミナー開催

−CSR経営浸透と責任ある企業行動確立へ


日本経団連は20日、東京・大手町の経団連会館で「第8回企業倫理トップセミナー−CSR経営の浸透と責任ある企業行動の確立に向けて」を開催した。日本経団連では毎年10月を「企業倫理月間」と定め、会員各社に対し、企業倫理の徹底を呼びかけている。今回のセミナーは、その一環として開催されたもので、会員企業トップや役員ら約270名を含む約430名の参加者を得て、CSR経営の浸透と責任ある企業行動の確立に向けて、経営者が果たすべき役割を改めて確認した。

■ 御手洗会長メッセージ


御手洗会長

冒頭あいさつに立った御手洗会長は、「日本経団連のさまざまな政策提言が社会の理解と支持を得るためには、個々の企業が、社会からの期待に応えていく姿勢を強めていくことが重要である」との考えを示すとともに、「グループ全体にわたる『事業活動全般の総点検』を、取引・契約内容や消費者・顧客対応など、ステークホルダーごとにきめ細かく行っていただきたい」と強調した。


■ 基調講演


中島氏

続いて基調講演を行った中島経営法律事務所代表弁護士の中島茂氏は、「CSRのR( Responsibility )が示す意味は、社会の期待に対し、役職員全員が自信をもって応えられることであり、『義務』や『責任』といった消極的なものではない。品質や表示での偽装や事故は、企業に数百億円単位の損失をもたらす。安全や品質、表示の適正化にしかるべきコストをかけることは合理的であり、株主重視経営とCSR経営は両立するものだ」との見解を示した。そのうえで、「社会の期待に応えるためには、世論を知ることが不可欠。経営トップがこうした認識をもち、企業として社会の期待に全力で応えるというCSR経営に一層力を入れていただきたい」と強調した。


■ パネルディスカッション

基調講演の後、日本経団連副会長・企業行動委員長・新日本石油会長の渡文明氏のコーディネートのもと、パネルディスカッションが行われた。


渡氏

西田氏

加藤氏

まず渡氏が、企業行動委員会が9月に取りまとめた「CSRに関するアンケート調査結果」について紹介し、「CSRは企業経営の根幹をなすものであり、企業活動のグローバル化やグループ全体の経営重視という視点から、各社の取り組みもますます広がり、進化している」と述べた。

続いて、パネリストで東芝会長の西田厚聰氏は、「東芝は“生命、安全、コンプライアンスを最優先”とする“地球内企業”として、地球温暖化防止や世界の多様性尊重に取り組んでいる」と発言した。そのうえで、技術・生産面やサプライチェーンでのコンプライアンス徹底、消費者視点の強化による製品安全対策、エネルギーの供給、消費の両面での革新的技術開発により2025年に約1億2000万トンのCO排出量削減を目指す「東芝グループ環境ビジョン2050」、社会との連携強化に向けた社会貢献活動についての発言があった。

キリンホールディングス社長の加藤壹康氏は、「キリングループは、社会との共生のため、CSRの視点を財務やガバナンスと並ぶ3本目の柱として位置付けている。経営への有機的な融合を図るため、社内にCSR推進委員会を設置し、社長として委員長を務めている」と述べたうえで、キリンが直面したクライシスとして2001年のシェアトップからの転落を例に挙げ、「この反省から、経営陣から営業の現場まで、一貫してブレることなくお客様本位の経営に努めている」と発言した。

【政治社会本部】
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