日本経団連タイムス No.2974 (2009年11月12日)

CBCCが設立20周年記念シンポジウム開催

−企業がCSRに取り組む意義や社会的責任投資の最新動向で討議


日本経団連の関連組織である海外事業活動関連協議会(CBCC)は10月30日、東京・大手町の経団連会館で、「経営における企業の社会的責任(CSR)の役割を再考する」を総合テーマに、CBCC設立20周年記念シンポジウムを開催した。CBCCの立石信雄会長をはじめ、180名が参加した。

講演やパネル討議を展開

日本経団連が1989年に設立したCBCCでは、日本企業が「良き企業市民」としてCSRを果たすことを支援するため、CSRに関するグローバルな動向調査や、海外のCSR推進団体との連携強化に取り組んでいる。今年は、CBCC設立20周年の年となるため、昨年の金融・経済危機を受け、世界的に企業経営が厳しさを増すなかで、改めて企業がCSRに取り組む意義やCSRと新興市場国におけるソーシャル・イノベーションの推進、投資家・市場によるCSRの評価をテーマに国内外の有識者による意見交換を行った。

最初の基調講演1では、デフタ・パートナーズ・グループの原丈人会長から、現代の基幹産業であるIT産業はすでに成熟期を迎えており、次世代の基幹産業を担う新しい技術を開発する必要があることが指摘された。そのうえで、日本企業には米国型の株主万能主義ではなく、新しい技術に常に取り組むという文化があるので、今後、次世代技術を日本からつくり出す体制を整備したいとの考えを示した。

続く基調講演2では、バングラデシュに本部を置き、農村の社会開発を目的とする世界最大級のNGO、BRAC(Bangladesh Rural Advancement Committee)のファズレ・ハサン・アベッド総裁がBRACの活動理念とマイクロファイナンスへの取り組みについて紹介した。アベッド総裁からは、72年にBRACを設立した後、マイクロファイナンスの手法をバングラデシュ全国に展開、貧困者に人間らしい生活を取り戻すことを目的に、教育の普及、自立心向上や経済的安定を提供しているとの説明があり、マイクロファイナンスにはグローバル企業の果たす役割が大きいことが指摘された。

続くパネル討議1では、金融・経済危機後の厳しい経済情勢下において企業がCSRに取り組む意義を議論した。米国のCSR推進団体BSR(Business for Social Responsibility)のアロン・クレーマー理事長は、気候変動などグローバルな公共政策上の課題に企業が関与する必要性や、企業のガバナンスにおける透明性、エネルギー・天然資源の枯渇への対応など、企業が取り組むべきCSR課題は増えており、現在の危機をチャンスに変えて“リセット”された世界の課題に対応できる企業のみが生き残ると指摘した。また、原会長は、経済情勢にかかわらず、企業が公益資本主義の考え方に基づき、短期的な株主価値にとらわれることなく、中長期的な企業経営をすることが持続的なCSR活動につながると述べた。

パネル討議2では、欧州における社会的責任投資(SRI)の最新動向について、英国公認会計士協会のロジャー・アダムス専務理事が説明した。アダムス専務理事からは、(1)2007年に欧州では2.6兆ユーロが広範囲なSRIに投資されているが、これは欧州の投資資産総額の約17.5%に相当する(2)SRI投資関係者の間では企業の透明性の向上を求めてより多くの非財務情報の開示を求める傾向が強まっているが、メインストリームの投資家はCSR/サステナビリティー情報を高く評価しておらず、情報開示の義務付けには明確な理由と説得力が必要と指摘している‐‐との説明があった。また欧州では年末のCOP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議)を控え、CSR課題の中でも気候変動への対応に特に注目が集まっているとの指摘があった。

【国際経済本部】
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