日本経団連タイムス No.2974 (2009年11月12日)

09年度タイ・フィリピン自然保護プロジェクト視察ミッション派遣

−地域住民の生活向上と自然保護、両立追求の重要性再認識/自然保護協議会



タイ・コッカンで現地NGO職員と
(左から7人目が大久保自然保護協議会会長)

日本経団連の自然保護協議会(大久保尚武会長)は毎年、日本経団連自然保護基金が支援する海外の自然保護活動に取り組むNGOの活動の視察や、地域住民、政府関係者などとの交流を目的に、大久保会長を団長に、ミッションを派遣している。今年度は10月16日から22日まで11名でタイとフィリピンを訪問した。

タイでは、日本のNGOであるバードライフ・アジアが実施している、地域住民主導の湿地保全活動を目的とした渡り鳥のモニタリング・保全活動と環境教育を視察。タイ湾沿岸の2カ所のプロジェクト実施地では、塩田地帯などでの渡り鳥の生態研究と保護、その結果を利用した観光客の誘致による地域住民の生活向上が図られていた。また地元の小学校での鳥類をベースにした環境教育の様子を視察し、集まった約100人の児童と交流を行った。

タイでの視察に先立ち、一行はアピシット・ウェチャチワ首相を表敬訪問。大久保団長は、タイでの支援実績を中心に、日本経団連のこれまでの自然保護NGOへの支援の実績などを説明した。これに対しアピシット首相は、日本経団連のタイでの自然保護活動に対する支援への謝辞とともに、経済と環境の調和の取れた社会形成の重要性を指摘した。

フィリピンでは、現地NGOのハリボン財団が、ミンドロ島(ルソン島の南側)で実施している、地域住民への環境教育を通じた自然保護活動を視察。ミンドロ島の固有種であるミンドロ・ハトなど絶滅危惧種の生態調査・モニタリング活動や、森林破壊の原因の一つとなっている過度の焼畑農業から、森林保全を目的にした有機農業への転換促進、また、自然保護と地域住民の生活向上を目的にしたエコツーリズムの推進の様子を視察したほか、現地コミュニティーの人々と懇談を交えて交流を図った。

ミンドロ島での視察の後、マニラで、パヘ環境天然資源省次官と懇談を行った。この中でパヘ次官は、ハリボン財団は、非常に信頼できる市民団体であることに言及したうえで、同財団への日本経団連の支援に対する謝辞を述べた。あわせて、環境と経済との両立に配慮した行政の推進を行っていくことを表明した。

◇◇◇

今回の視察を通じ、生態系調査などの科学的分析に基づいた環境保全や自然保護の重要性、また環境教育を通じ地域住民の協力のもと自然保護プロジェクトを推進することで、地域住民の生活向上と自然保護との両立を追求することの重要性を改めて認識させられた。

Copyright © Nippon Keidanren