日本経団連タイムス No.2977 (2009年12月3日)

シンポジウム「子育てに優しい社会の実現を目指して」を開催

−働き方の改革に向けた企業の挑戦探る


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は11月18日、東京・大手町の経団連会館でシンポジウム「子育てに優しい社会の実現を目指して」を開催、企業の人事・労務担当者ら約200名が参加した。

日本経団連では、子育てを社会全体で支援していくことが重要との認識のもと、政府が進める「家族・地域のきずなを再生する国民運動」への協力を会員企業へ呼びかけており、シンポジウムは、この取り組みの一環として開催されたもの。

第一部ではまず、前田新造・日本経団連少子化対策委員会共同委員長・資生堂社長が開会あいさつとして、「少子化社会における企業の社会的責任」と題するスピーチを行った。このなかで、日本経団連の少子化対策にかかる提言のポイントを紹介したうえで、少子化対策における企業の役割はワーク・ライフ・バランスの推進にあるとして、資生堂の具体的な取り組みを紹介。事業所内保育施設「カンガルーム汐留」の開設経緯、育児時間制度を利用する従業員の代替要員の配置施策などを紹介し、今後もさらなる取り組みを進めたいとの抱負を語った。

続いて基調講演として、伊岐典子・厚生労働省雇用均等・児童家庭局長から、「政府における少子化対策の現状と課題」について説明があった。伊岐局長は、「合計特殊出生率が低下の一途をたどり、人口減少と高齢化が同時進行するなか、政府はワーク・ライフ・バランスの推進と包括的な次世代支援体系の構築を車の両輪と考え、少子化対策に取り組んできている」と説明。今後の課題として、(1)子ども手当にかかる制度設計(2)待機児童解消に向けた保育サービスの量的・質的充実(3)少子化社会対策大綱「子ども子育てビジョン」の策定(4)保育制度の抜本的改革に向けた検討――などを挙げ、しっかり議論し取り組みたいとの意向を示した。

第二部では、パネルディスカッション「子育てに優しい社会に向けた働き方改革と地域連携のあり方」が行われた。パネリストとして清原慶子・三鷹市長、坂田甲一・凸版印刷人事労政本部人事部長兼人財開発部長、高尾剛正・住友化学専務執行役員、高橋陽子・日本フィランソロピー協会理事長が出席、モデレーターを宮島香澄・日本テレビ報道局経済部解説委員が務めた。

まず、企業の子育て支援に関する活動や地域やNPOの取り組みが紹介された。住友化学では、女性の管理職への積極登用のほか、育児支援制度の充実の一環として、特に事業所内保育施設の設置を進めているとの説明があった。凸版印刷からは、出産を理由とした退職者の再雇用制度の導入をはじめとする子育て支援制度の拡充、子育て支援の情報提供サイト「こどもば」の開設など、地域貢献事業が紹介された。続いて三鷹市から、保育の質の確保に留意しつつ多様な保育サービスを提供していることや、NPOと連携した活動事例などの紹介があった。また、企業と子育て支援事業を手がけるNPOとの橋渡しを行う日本フィランソロピー協会から、ワーク・ライフ・バランス施策の先進事例が紹介された。

続く意見交換において、育児支援制度の利用を促進するには、マネジメント層への研修や労使での綿密な話し合いを通じたきめ細やかなフォローが重要との意見があった。また、男性の育児参加について、育休取得を進めるためには、キャリア形成や昇進に影響するとの不安を取り除くよう、時間をかけて意識改革を図ることが必要であるとの見解が示された。最後に、地域における子育て環境の充実に向けて、例えば事業所内保育所の設置を自治体が助成し、地域へも開放するなど、企業・NPO・地域が連携を深め協働する方向で取り組むことの重要性を確認した。

なお、会場では、ノー残業デーの実施や職場参観の開催など、「家族・地域のきずなを再生する国民運動」にちなんだ各社の取り組み事例がスライドで紹介された。

【経済政策本部】
Copyright © Nippon Keidanren