日本経団連タイムス No.2978 (2009年12月15日)

上場制度整備の具体的内容と進め方で説明聞く

−金融制度委員会資本市場部会


日本経団連は11月19日、東京・大手町の経団連会館で金融制度委員会資本市場部会(武井優部会長)を開催し、東京証券取引所(以下、東証)の静正樹執行役員から、東証が9月に取りまとめた実行計画に基づく上場制度整備の具体的内容と進め方などについて説明を聞いた。静執行役員の説明の概要は次のとおり。

東証では、株主・投資家の保護および尊重を図りつつ、流通市場の機能を適切に発揮させ、上場会社の企業価値および国際競争力の向上を支援する立場から、2006年以降継続して、上場制度の包括的な見直しに取り組んでいる。今年の実行計画の最重点課題は、(1)上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備(2)環境変化を踏まえた適時開示に係る制度および実務の整備――である。

1.上場会社のコーポレート・ガバナンス向上に向けた環境整備

2010年3月期決算に係る定時株主総会に向けて、速やかに実施する主な事項は次のとおり。

  1. (1)今年6月に金融審議会「我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ」の報告書で「国際的にも通用し得うる一つの望ましいモデルとなり得るのではないかと考えられる」とされたコーポレート・ガバナンスのモデルを「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」に参考として提示する。ただし、当該モデルはあくまで参考例であり、東証としてその採用を推奨するものではない。あわせて、上場会社に対し、自社のガバナンス体制を選択する理由の開示を制度化するが、上記モデルとの相違点を説明するという趣旨ではなく、上記モデルを念頭に置いて説明するという趣旨である。

  2. (2)監査役の機能強化に係る取り組みの促進を図るべく、上場会社コーポレート・ガバナンス原則において「望ましい事項」とし、各上場会社の取り組み状況に係る開示を充実させる。

  3. (3)社外取締役・監査役について、会社との関係に関するより具体的な内容の開示と、当該者の独立性に関する会社の考え方に関する適切な開示を充実させる。

  4. (4)一般株主保護のため、社外取締役または社外監査役の中から一般株主と利益相反が生ずるおそれのない者を独立役員として1名以上確保しなければならない旨を「企業行動規範」の「遵守すべき事項」に規定する。

  5. (5)株主総会議案の議決結果について、上場会社各社の実務に応じて、可能な範囲で賛否の票数に関する自主的な開示を要請する。

2.環境変化を踏まえた適時開示に係る制度および実務の整備

速やかに実施する事項については、次のとおり。

  1. (1)適時開示資料に最低限含めるべき開示内容を明確化し、実効性確保手段の適用の予見可能性を向上すること、非上場の親会社等の会社情報に係る適時開示について、支配株主との取引内容や支配株主等に関する事項の開示に統合し、実務を効率化すること等により、効率的で効果的な開示を推進する。

  2. (2)IFRS(国際財務報告基準)導入に向け、関係各方面の動きに必要な協力を実施するとともに、会計基準の開発、変更等に係る活動への協力に努める旨を企業行動規範に明記する。

【経済基盤本部】
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